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4の実例。

ある中間管理職の会社員の男性がいた。
彼の仕事は、チームをまとめ、業務の進行を管理したり、人材を育成したりすること。

会社からの評価は悪かった。

彼の願いは、仕事でリーダーシップをうまくとれるようになることだった。
そして、もう一段階、仕事の階級があがること。

彼は、リーダーシップに関わる本を読み漁った。
セミナーにも行った。
しかし、全く効果は出なかった。


ある時、彼は、その話をある女性にした。

「笑わないからじゃない?あなた姿勢も悪いし」とその女性は言った。
「本やセミナーの手前のそれ以前のことが、できてないからじゃない?」


その男性の癖は、うまくいかない時に舌打ちをすることだった。

「目の前で舌打ちされたら、あなた、どんな気分がする?」
その女性は言った。


それから男性の持つ本をパラパラとめくった女性は、言った。
「これは、ホワイトカラー向けの本でしょう?あなたの働く環境は、ブルーカラーの集まりでしょう?営業系の職種の人にはこれらのリーダーシップの取り方が効果的かもしれないけれど、ブルーカラーの人は、また、違う考え方をすることが多い気がするけど、これらの本は、何か役に立つのかしら?」


そして、女性は言った。
「人柄や人情、共感力が必要なリーダーシップを取る時、笑わないのはもう意味がわからないけど」


男性は思い出した。そして、言った。
「そう言えば、一番近い先輩が、僕にずっと言っている。いつもニコニコしとかないといけないんだ、と」

男性は、まだ半信半疑だった。
しかし、彼は舌打ちをやめること、できるだけ柔和な表情を作ることを心がけ始めた。


1年経つ頃、彼の査定評価は上がり始めた。
2年経つ頃、彼の階級は上がった。
3年経つ頃、彼の仕事は非常にスムーズになり始めた。
4年経つと、彼は会社を動いた。そして彼のお給料も上がった。


ただ、笑っただけで。

それは、著名人が書いた本には書いていないことだった。

それは、彼個人の場合だけに関係することだった。

そして、男性の一番近いところにいたさえない容姿の先輩は、彼にそのことを10年前から言っていた。

願いを叶えるために必要な賢者の持つ知恵は、ほとんどの場合、近くにある。
賢者は賢者の姿をしていない。