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願いを叶えたい時、自分が叶えたい願いをすでに叶えた人を参考にすることがあるかもしれない。

私の観察によれば、願いを叶えにくい人はここで、人選ミスをすることが多い傾向がある。

願いを叶える手段の参考にする時は、願いを叶えたその人のパーソナリティはあまり関係ない。
参考にするのは手法で、人間性ではない。
その願いを叶えるのに、特定の人間性が必須条件な場合は、話は別だが、そういう願いは多くない。

人間性は、自分の人間性を活かせば、それでいける。

できれば、できるだけ普通の人か、または、自分に近い要素を持つ人で願いを叶えた人の方が、その人にとって簡単な方法を持っていることが多いのだが、願いを叶えにくい人は、ここで権威ある輝いている人や人間性に目を向ける傾向が強い。


そして、その結果、シンプルだった願いの話がやや複雑になる。

「あの人のようになりたい」という願いが加わるからだ。
願いを叶えてあの人のようになりたい。

細かくいえば、自分の願いを叶えることは、この時、手段に成り下がる。
あの人のようになりたい、という新しい願いの誕生だ。



例えば、仕事で成功したい。
例えば、豊かな暮らしを送りたい。
例えば、結婚したい。

そして、あの人のようになりたい。


願いを叶えるために、だれかを参考にする時、着目するのは、だれかの「やり方」だ。
考え方、動き方、振る舞い方、話し方、コミュニケーションの取り方、お金の動かし方。
いくらでも、他人は参考にできるが、人間性や性格は参考にしにくい。


参考にするのは、願いを叶えたその人が持っている情報だ。

例えば、部屋を片付けたい時、お片づけの本を参考にしようと本を見るとして。

願いが叶いやすい人は、片付け方法をせっせと真似し、自分用にアレンジを重ねる。
合わなければ別の方法を試す。

願いが叶いにくい人は、まず、本を書いた著者を確認する。
そしてもし、その人を素敵!共感できる!と思えば、そっくりそのまま真似しようとする。
気がつけば、その人のファンになり、その人が書いた片付けの本を何冊も何冊も買う。
そして、真似できない時、自分はだめだ、変わらなくちゃ、と考える。

本当は、そのやり方は合わないため、別の人のやり方を真似した方が早いかもしれないけれど、ファンになってしまっているので、他の人の持つ情報は目に入りにくくなる。


覚えていますか?
願いは、「部屋を片付けたい」だ。


探していたのは、自分ができる部屋の片づけ方であって、部屋を片付けるのが上手な憧れの人ではない。


願いは変わりゆくものなので、別に変わっても問題ないのだが、これはまた、願いが叶いにくい人の特徴のひとつだ。

自分の願いを忘れやすい。
簡単に手放す。
そして、自分が叶えたい願いを抱いている、自分にもその願いは叶えられる、ということを忘れて、願いを叶えた人にただ憧れる。

そして、願いが叶いにくい人は、憧れる人となる。

ファンになるのが悪いわけではない。
素敵な人を見つけることは、幸せなことだ。
ただ、もしも、願いの叶え方を探していたなら、それを忘れると、願いは実現から遠ざかる。
 

願いを叶える時、自分は自分のままでいい。
誰かになる必要などない。


宇宙飛行士になりたい、スーパーモデルになりたいという大それた願いでなくても、これは起こる。

例えそれが、部屋を片付けるというささやかな願いでも。


願いを叶えたいならば、参考にするのは、人間性ではなく、手法だ。
参考にするのは人ではなく、やり方に関わる情報に着目する必要がある。
願いを叶える時、着目しなければいけない人間は、別にいる。
憧れの人ではない。

そして自分が共感できない情報でも、効果がある時は効果がある。
なぜなら、共感できない方法を普通、人は試さない。だから、それまで試したことがない可能性が高く、新しい展開が期待できるからだ。


自分が願いを叶えていく時、他者からの共感はサポートになるが、自分が、願いをすでに叶えた誰かに共感することに重きをおきすぎると、時に、願いは遠ざかる。