ぼちぼち

最初に私のことをクリエイターだと呼んだ人のことを、私はよく覚えている。

30歳の頃に私がいた小さな散らかった事務所に訪ねてきた年が近いその人は、私の散らかったデスク周りを見て「クリエイターだねえ」と言って、私の隣にしゃがんだ。

私は、「これ見て」と、はじめて作ったCDジャケットを見せた。
彼は「いいね」と言った。

私がデザインしたものを、私は、必ず彼に見せた。
「いいね。君には才能がある」と、彼は必ず褒めてくれた。

当時の私の仕事は、営業だった。
私には、自分がクリエイターだというのはピンとこなかった。
彼しかそんなことは言わなかった。
私は、自分に才能を感じなかった。
今も感じていない。


けれど、彼に見せたくて、彼に褒めてもらいたくて、私は、一緒懸命作った。
私が作ったものを、彼はいつも最初に見た。
そして、「いいね」と、必ず言った。


この人が、私が三十代前半、唯一、本気で結婚を考えた人だ。
互いに心に傷を負っていた非常にしんどい時期に、ことごとく会社の転勤に邪魔されながら、それでも、数年、私たちは細い糸を手繰るように、細い関係を続けた。

それは友情なのか、恋愛なのか、よくわからなかった。
そして、最後に会話をして数ヶ月後、互いに違う人と結婚した。


今朝、私は、目覚めてすぐ、彼のことを思い出した。


ありがとう、と思った。
どうかあなたの人生が、その最期まで、幸せに満ちたものでありますように。


そして、昨夜、夫とした会話を思いだした。

今、私が作るもの、書くもの、をいつも最初に見ている人。
「好きなだけ書け」と、私にテーブルをくれた人。
そして、私を褒め続けてくれる人。

そこに、自分を愛してくれる人がいる時、私は作る。

私は、自分を愛してくれる人を必要とする。
一人の力では、できない、


ありがとう。



さあ!

どうだ!

気づくのはこれで全部じゃないか?

感謝もしたぞ!


ボチボチ、本調子に戻る方向で、どうぞよろしく。


37.0度。