おっちゃんUさんの夢

おっちゃんUさんは、学校卒業後、法務局というお堅い職場に就職し、その後、俳優を目指し仕事を辞めた。

憧れは柄本明。
柄本明から受けたレッスンの話をする時のおっちゃんUさんは30歳くらい若返る。

おっちゃんUさんはすごくいい声をしている。

そして、その後、Uさんは、牧師になりたいなと思ったようなこともあるらしい。


そんなおっちゃんUさんが、ある日、礼拝の聖書のメッセージを担当した。
やかましねんと、私は思った。
10人入ればいっぱいの部屋に、何人おると思てんねん。

おっちゃんUさんは、のりのりで気持ち良さそうだったが、大観衆の前で喋ってるみたいだった。
なまじ発声がいいので、やかましい。


礼拝が終わった後、私はおっちゃんUさんに「ねえねえ、200人くらい見えてたでしょう?声のボリュームがそれくらいやった」と言った。

するとすかさず、おばあちゃんの方のSさんが「これでも減ったのよ!最初は2万人くらいの前で、喋ってるみたいやったんやから!」と笑った。

どうやら、2万人と200人の間には、2000人の回もあったらしい。

まだその頃、私はいなくてよかったと、私は思った。


というわけで、私が把握していた、おっちゃんUさんの叶わなかった夢は、2つ。

俳優になりたい。
牧師になりたい。