Sさんの困りごと

「よくねえ、クリスチャンですか?それは大変ですねって言われるのよ。それで困ってるのよ」と、おばあちゃんの方のSさんが言った。

私はSさんが持ってきてくれた海苔巻きをむしゃむしゃ食べ、ああ熱い緑茶も教会にあった方がいいなと思いながら、「何がですか?」と言った。

Sさんは、「言われるのよ。毎週、教会に行かなくちゃいけないんでしょう?大変ですねってね」
一緒に話していたTさんも、うんうんとうなずいた。

私は、ケタケタ笑った。
そして、笑いながら、「いや、別に行かなくていいし」と言った。
毎週、教会に必ず行けとか、聖書に書いてないし。

Sさんは、「そうなのよ。毎回、いやいや、行かなくちゃいけないから行ってるんじゃないんですよ、楽しくて行きたいから行ってるんですよって説明するのが、もうめんどくさくて」と言った。

「教会に行く人がクリスチャンってわけでもないのに、おかしな話ですねえ」と私は言った。

他のみんなも言うことには、それはよくあることなのだそうである。


ふうん、と、私は思い、それからもう一度、ふうんと思った。


なんで、私の周り、誰も私に「大変やねえ、毎週教会に行かなくちゃいけなくて」って言わへんのやろ?
よくあることなんでしょ?


私はまた海苔巻きを食べながら、少し考えた。

覚えてないだけかもしれないから、ちょっと考えよう。

私がクリスチャンになると言ったり、クリスチャンだと言ったりした時、私は何と言われたか?


最初に言ったのは夫。
夫はたしか。
「ふうん。いいけど。今まではクリスチャンちゃうかったんか?僕、君はクリスチャンやと思ってたわ。」

教会の礼拝については。
「起きろ。ほら、礼拝行くで。」(夫、仏教徒。だから、送ってくれるだけ)


他の人はなんて言ったかな?

夫の母は、「まあ、お葬式代が安いわね。」

うちの母はびっくりしてたけど、「ま、あなた、ゴスペル好きだものね」と言った。

友達。
よかったねえ、とか、おめでとう、とか、ふうん、とか。


ともかく、誰も、誰一人、「毎週、教会に行かなくちゃいけないんでしょう、大変ね」とは、ここまで、私に言っていない。

なんでかしら〜?と、私は考えた。


私が言われない理由は、多分これだろうと思いついたけど、それは褒められた理由じゃないから、ご想像にお任せする。

ともかく、Sさんの困りごとは、私には、この先も起きなさそうだった。