ガガ様とハノン
ある日、私は、仕事の後に楽器屋さんの練習室をレンタルする待ち時間、椅子に座って、壁に飾ってあるいろんなサイズのバイオリンを眺めながら、レディー・ガガのBorn this wayを聴きながら思った。
ガガ様、すげえ。
ちなみに、その前の日は、別の楽器屋さんの練習室にいた。
その前の前の日に動画サイトで観たレディー・ガガの同じ曲の弾き語りバージョンにいたく感動した私は、自分の電子ピアノでなく、アコースティックピアノで思いっきり弾き語りたくなったのだ。
その時の話が、ひとつ前の話だ。
そして2日続けて、楽器屋さんの練習室にたどり着いた私の指は、ハノン第一番を弾きはじめた。
そしてそれから30分、私は、指が揃いはじめるまで、くそつまらない曲コンテストがあったら間違いなく優勝するだろうハノン第一番を取り憑かれたように弾いていた。
そして次に弾いたのは、ハノン第二番だった。
指が揃わない、タッチが揃わない。
つまらなくはなかった。
ピアノの先生が横に座っている気がした。
「一流のピアニストと、その辺の小学生。ただひとつだけ、同じものを弾いている曲があるのよ。ハノンが上手に弾けない、ハノンを練習しないピアニストはこの世にいないのよ。一流のピアニストの方が、小学生よりうんと長い時間、ハノンを弾くのよ。」とは、ピアノの先生が、レッスンの度に、ハノンを初見で弾いておしまいにする私に、何度も何度も言ったことだ。
他は練習しなくてもいい、弾きたい曲を好きに弾いていればいい。でも、ハノンだけは必ず、毎日弾きなさいと、先生は言った。
ガガ様すげ〜と私は思った。
ハノンを弾くためだけに、私に練習室をレンタルさせた。
ガガ様がすごいのか、ガガ様の動画を私に見せた何かがすごいのか。
正しいクリスチャンは後者をすごいと言わねばならない。
ガガ様をすごいと言ってはならない。
この世ですごいものはただひとつである。
私は正しいクリスチャンではないので、浮かぶことは。
ガガ様すげえ!
すごいもんはすごい。
ガガ様を選んだ何かについては、英語なら書ける。
Jesus is so cool!
日本語で書いたら、苦情が来そうだから英語にしておく。
英語圏の人は苦情を言うまい。
そして私はその次の日の練習室をまた予約した。
明日もハノンを弾く。