楽しそうやね、あんた

ある礼拝後、いつものように、私が張り切って、おっちゃんUさんに「今週はホーリースピリットがこんなおかしなことをしました!」エピソードを披露し、おっちゃんUさんが、「はいはい、聖霊さまが。よかったね。あんた、本当に楽しそうやねえ」と聞いていた時。

静かな微笑みと共に、お茶を飲みながら2人のやりとりを聞いていたTさんが、「神さまは、本当に、楽しいことを求め続ける人には、楽しいことを与え続けるんですねえ。それから、泣きたい人には涙を」となんだかしみじみと言った。

私は、は?と言った。


Tさんは、内側に熱き血潮を秘めた表面は冷静な60代の女性だ。
たまに、おっちゃんUさんとTさんは、聖書解釈について、ボクシングみたいな議論をしている。

私とおっちゃんUさんでする聖書の話は、漫才みたいなことにしかならない。
だいたい、おっちゃんUさんが「あんたの解釈は、それにしても、いつも斬新やねえ。とんちんかんなとこも沢山あるけども、まあ楽しそうやからええかと思ってしまうんが、不思議や」と笑い、周りもゲラゲラ笑っているだけだが、この2人のやりとりは、ガチで熱い。


私は、そばでそれを見ながら、「今、Tさんに1ポイント、そしてまた、Tさんに1ポイント入りました!」と、心の中でポイント勘定しつつ、にやにやそれを眺めている。

負傷者が出そうなら割って入らねばならないが、2人ともタフなので、絆創膏が必要になったことはない。

ただし、いまだ、Uおっちゃんが勝ったところは見たことがない。
いつもKO負けだ。


ある時、教会からの帰り道、一緒に歩いていたTさんに、「ボクシングが面白いから、もっとやってくださいよ」と、私は言った。

それからしばらくして、私とおっちゃんUさんが、また、ああでしょ、こうでしょと言いあっていた時、Tさんがおかしそうに言った。

「私に、ボクシングと言ったけれど、あなたもUさんに大概ひどいわよ。顔も怖いし。」

私は、まじめな顔をして言った。

「ツッコミは笑ってはいけないんです。
だから、怖い顔をしてるんです。松本人志がそう言っていました!」

Tさんは、吹き出した。

おっちゃんUさんが、「あんたは、ほんまに楽しそうやなあ」と言った。


ちなみに、教会では、「好きなことを好きなように喋っていい」と最初に言われている。
聖書の解釈は礼拝でお勉強するが、あ〜、そういうこと!と自分で思うまで、みんなただ面白そうに笑っている。

なんかねえ、旧約聖書と新約聖書は絡みあっていてね、ややこしい。
ミステリー。
いっぱい映画ができるのが、わかる気がする。


信仰の道は人それぞれ。
何が正解かは神のみぞ知る。
楽しい信仰もあっていい。