普通のやり方
普通のやり方は、世に溢れている。
普通の人が、あちこちで見せてくれているし、普通の会話の中で話してもいる。
そのほとんどが真似しやすいことだ。
なぜなら、普通の人が行う普通の方法だからだ。
セッションを続けてきた間に気づいたことは、悩み多き人々の多くは、この普通の方法に価値を見出さないことがあるということだった。
普通の方法を提案すると、え？と、拍子抜けの顔をされることは多い。
しかし、試しましたか？と尋ねると、いいえ、という答えが返ってくる。
じゃあ、試して、と、わたしは言う。
なぜかは知らないが、特別（とその人が思う）人が語る方法であったり、特別（とその人が思う）やり方を探し求め、それを最初に試す。
自分の周りにいる、自分が欲しいものをすでに持っていたり、自分が抱えている悩みからは解き放たれている人を1人見つけて観察してみれば、話は早いが、それをしていないことが多い気がする。
自分と違うところを見つけて、真似してみればいいだけだけど。
それは、ほとんどの場合、考え方ではなく、やり方にある。
また、悩み多き人々の特徴は、考え方を真似しようとすることだ。
頭の作りはみな違う。
悩みが、心の中だけに関わることであれば、考え方で解決する。
けれど、悩みが外側の世界と関わることであれば、真っ先に取り組むべきは、外に見えている自分に関わる部分だ。
他人には、心は見えない。
自分にも、他人の心は見えない。
他人の心を見て、他人の心を理解することはできない。
他人の心や考え方が理解できると考えるのは、大きな思い込みだ。
全部、見えたり聞こえたりするものから、自分が推測しているにすぎない。
同じように、他人も、自分について、見えたり聞こえたりするものから、自分を推測しているにすぎない。
同じ行動や発言をしていても、その奥にある考え方や心は千差万別だ。
わかりやすい例をあげるなら。
今、外出時にマスクをつける理由も、人によって違う。
みなが、自分と同じ理由、正しい理由ではマスクをつけていない。
理由はどうあれ、マスクをつけている方が、現段階で明らかになっている統計からすると、ウイルスには感染しにくい。
マスクをつけた理由は関係なく、取った行動が結果に反映する。
マスクをつけるのは簡単だ。
この、マスクをつけるのと同じくらい簡単なことで、取り去ることができる悩みは世に溢れている。
私は、なぜ、それを放置するのかが謎だった。
いつでも簡単に解決できる悩み。
心は全てを解決しない。
心とは関係ない出来事もまた多い。
なぜ、心だけで、全てを解決しようとするのかが、時にわからなかった。
心ほど、不確かなものはないというのに。
心は、意識と並び、いまだ、正体が明らかになっていない存在である。
目に見えないもの。
そして、やがて、全てを心で解決することが普通のやり方の人の悩みは、やや解決しにくい傾向があると気がついた。
普通もまた人によって違う。
これは、教会に通いだして、さらに強まった思いだった。
目に見えないものは、目に見えないものを救う。
しかし、悩みの多くは、目に見える世界に存在する。
目に見えないものが、どうやって、直接的に目に見える世界を救う？
目に見える世界に存在する普通の人を用いずに？
私は、心と精神性に過度に期待すると、悩みは解決しにくいと思った。
ほとんど確信的に。
普通の人々の普通の目に見えるやり方で、ほとんどの悩みは解決するような気がする。
それに満足するかしないかは、また別の話。
まずは、普通の人々に価値を認めることからはじめるのを、私はおすすめする。
好きにならなくてもいい。
価値を認めて、普通のやり方に価値を認める。
それだけで、広がる世界がそこにある。