眉毛のはなし
大学一回生。
バイトしていたファーストフードのお店に、テレビ局の取材が来た。
深夜の音楽番組で、ファーストフード店の女の子が選ぶ人気曲ランキングかなんかだった。
テレビ局の人は、カウンターにいる女の子を見て、私を指差した。
それで私は、カメラに向かって「いらっしゃいませ。こんばんは」と言った。
我が家は大騒ぎだ。
母は、祖父母や親戚のおばちゃんにまで連絡して、私がテレビに出ると言いふらした。
私がミーハーなのは、この人の血だろう。
当日、深夜、テレビの前に家族全員がいた。
そして、私が登場した。
ほんの何秒か。
私が消えると、父は言った。
「お前、眉毛をなんとかした方がいいな。形。」
母も、そうねと言い、同じ形の眉毛をしている妹まで、うん、そうやなと言った。
全員一致で私は眉毛を手入れした方がいいということになり、その次の日、私は、眉毛用のかみそりを母から与えられた。
変な家と、私は思った。