前髪のはなし


「前髪が気に入らない!学校休む!」

小学一年生の私は、ある朝、母ともめた。


前日、母が私の前髪を切りすぎて、私の前髪は眉毛より上の長さだった。

こんな前髪でははずかしくて外に出られない!と、私は言った。


髪の毛ごときで学校を休むなという母と私は、朝からバトルを繰り広げ、ついに母は切れて言いすてた。

「待ってなさい!お母さん、校長先生のところに行ってくるから。」


そして、母は同じマンションの3階上に住む校長先生のところに行った。

おそらく、私を説得してくれと言いに行ったのだろう。

母は、私の説得に失敗すると、医者やら先生やらを味方に引き入れようとすることが、時々あった。

(しかし、彼らは、私を尊重してくれた。)


しばらくして、母は帰ってきて言った。

「もう、いいわ。あなた、休みなさい。担任の先生には、校長先生がお話ししてくれるって。」


そして、なぜかは知らないが、ついでに妹も幼稚園を休み、私と妹は一日中遊んだ。

妹は、なんでも真似したがったから、お姉ちゃんだけずるい!と騒いだのかもしれない。

そして、母は、もうめんどくさくなったのかもしれない。


母は、その日、主に寝ていた。

朝からバトルで疲れたのだろう。


夕方、校長先生が家に尋ねてきた。

私は妹と走り回って遊んでいた。


校長先生は、私に言った。

「かわいい髪型だね。」


私は、そう?と言った。

「うん、ほんとにかわいいよ。」と、校長先生は言った。


それで、私は言った。

じゃあ、明日は学校に行く。


そして、次の日、私はすっかり前髪のことは忘れて学校に行った。