砂漠を緑にしたい友人のはなし

思い出ばなしをしよう。

高校の友人にひとり、IQが160だか180だかの子が混じっていた。
あんた、なんでうちの学校におるんや?という謎はあったが、なぜかいた。
彼女はお父さんの仕事の関係で、途中で引っ越してしまったが、付き合いは続いた。
私ともうひとりと彼女は、気があってよく遊んだ。
夏休み、白いTシャツにリーバイス、大きなる輪っかのイヤリングをつけたいでたちで、3人で行ったディズニーランドの写真はまだ残っている。  

担任から、私ともうひとりは、お勉強ができない子たちのレッテルを貼られており(できないというか、ほとんどしていなかった)、彼女は、東大に楽勝で入れると大絶賛されていたのを覚えている。
私の成績は、国語、英語、音楽以外は死亡に近い状態だった。

彼女の英語の教科書と辞書は使い込みすぎて厚さが変わっていたけれど、彼女の物理と数学の教科書は新品のようだった。

彼女が言うには、物理と数学は、問題が答えなのらしかった。
見れば、公式は浮かぶ。
だから、勉強は授業中だけでテストはいける。
英語は覚えなければどうにもならないから、勉強するというのが、彼女の理屈だった。

物理と数学は覚えるものではない、公式は作るものだ、と私には意味不明のことを彼女は言った。
その頃、私は、テストの度に、物理の公式を消しゴムに書いてテストにいどみ、公式をどこに使うかがわからないという事態になっていた。
カンニングすら成立しないという。

私は、彼女に、国語と英語はほとんどの問題に答え書いてあるでしょと言ったが、彼女はそれこそ意味がわからないと言った。

ともかく、彼女は勉強が好きなようだった。
よく遊んでもいたけど、よく勉強もしていた。
目的があったからだろう。


性格は真面目とは対極な感じで、わりと破綻気味でむちゃくちゃだった。
バカと天才はなんとやらやなとよく言った。

そんな彼女の夢は、地球の砂漠を緑化することだった。

彼女は、本気だった。
彼女は環境工学を勉強しに、アメリカの大学に行った。そして博士になって日本に帰ってきた。
その間には、なかなか破天荒な日々があった。
私の友達の唯一の博士は彼女。

もう長い間会ってないけれど、もうひとりから、彼女が今、ようやく日本の大学の研究室に居場所を見つけたと聞いた。

よかったなあ!と2人で喜んだ。

いつか、地球の砂漠は再び緑になるだろうか?
なるといいね、と思う。

地球環境のためではない。
それが友人の夢だからだ。

私には、地球とか社会とかを考えるより、友人の夢が叶うことの方が、イメージのリアリティを持つ。

理由は知らんけど。