ある霊能者のはなし*5

ある霊能者のはなし*3、4のつづき。


先祖供養についてのある霊能者の友人の話はまだ続いた。

「そういえばこんなにちゃんと先祖供養の話したことないわ。Yちゃん、話、聞くの意外と上手やな」と彼女は笑った。

私は、「私もそれは仕事だし」と笑った。
「普段、あんたよう喋るから忘れとったわ」と彼女は笑った。

ほんで、と、彼女は話を続けた。

「これまでの先祖供養に意味ないか言うたら、それはまたちゃうと思うねん。
特に庶民な。
自分が幸せになったらいいゆうても、食べんのに精一杯みたいな時代が長かったやん。

先祖を丁寧に扱ういうんは、ようするに、自分も死んだらそうしてもらえるってことやろ?
子孫から感謝してもらえる、仏さまとしてお経を読んでもらえるってことやん。

それってさ、自分の人生に価値があるって感じせえへん?
どんなに苦しくてもさ、死んだら、丁寧に先祖として祀ってもらえるねん。

あなたの人生には意味があるんですよって、言ってもらってるみたいやん」


ああ、それはそうかもね、と私は言った。


彼女は「先祖供養を最初に考えついた人は、きっとそうやったんやと思うねん。生きてる人を救いたかったんやと思うわ」と言った。


生きてる人のためか〜、と私は言った。

彼女は、またにやりとして、「たまには、ちゃうときもあるけど」と言った。

私は、それ、やめてよ、にやっとするの、あなたがそれすると怖いわ、と笑った。

彼女はおかしそうに笑った。
時々、霊能者感を醸し出しておく方針らしい。


彼女は続けた。

墓とか仏壇で形あったら、思い出しやすいやろ?
なにかと。
あなたは大事な存在なんですよってさ。
それにさ、レジャーの少ない時代、法事とか墓参りは一大レジャーのひとつやったと思うで。
休みとかないんやから、あんた。
週休2日制とかちゃうで。
盆と正月しか休みなかったんやから。

意味あると思うで。
生きてる人のためにさ。
だから否定はせえへん。


「ほんでな」と彼女は続けた。

「先祖の因果とかあるとしたら、それは、気合いいれて自分の人生をやらんとあかん。
すごい幸せやった人がおらんということやから。

先祖の因果がある人がおるとしたら、その人は、ご先祖さん達にとって、夢と希望の星や。
今度こそ、幸せな人生を送ってや!って、期待されてんねん。

だから、一生懸命、自分のことをやったらええねん。
壺とか買わんでええで。
印鑑もな」


彼女はゲラゲラ笑った。
そして、ほんまに私が誰かわからんようにしてよ、と言った。
それから、「昭和の霊能者に刺されんで、まじで」と楽しそうに笑った。


そこまで話すと疲れてきたようで、彼女は、今日はこれでいい?と聞いてきた。

いいよ、ありがとう、と私は言った。

彼女はうなづいて、私がネタ代に奢ったミルフィーユを「ミルフィーユって、おいしいけど食べにくいよな」と言いながら、パクパク食べ始めた。


次はオーラの泉的なのを、と私は言った。