暗躍*休憩室の思い出

暗躍について考え出したら蘇った記憶があり、1人で大笑いした。

なぜ、あんなことが許されていたのだろう?と思ったのだ。

あんなことは、何年前かというと、あら、もう15年は前だ。
時間が経つのは早い。

当時、私はとある結婚式場の中で働いていた。
私は結婚式場の会社の人間ではなく、そこと取引している会社の事業所長をしていた。
そして、結婚式場の中に事業所の部屋があったので、私はそこに通勤していた。

私は、勤務時間の半分以上の時間を、その結婚式場の中にあるスタッフ用の休憩室で過ごしていた。
事務所が狭かったので、スタッフがいっぱいになると息苦しかったのもある。

また、休憩室にいれば、自分が話をする必要がある人達がやってくるので便利だったのもある。
結婚式場には、決まった休憩時間はない。
休める時にみな休憩する。

私が、そこに通い始めて最初にしたことは、誰がいつ休憩室にやってくるか、それぞれの人が休憩する時間を把握することだった。

私は女性なので、クライアントを飲みに誘って根回しをするという男性陣が使う方法が使えなかった。
そんなことをしたら、すぐ噂になる。
代わりの場所として、私は休憩室を使った。
根回しをするには、休憩室くらいの方が、本音で話せるのでちょうど良かったのだ。


とはいえ、私がそこでしていたことは主に、ケラケラ笑いながらおしゃべりしたり、誰かの相談を聞いたり、キッチンさんが分けてくれるまかないを食べていたり、サービスさんが分けてくれる残ったお弁当を食べていたりと、とても仕事とは見えないことが主だった。


しかし、不思議だったのは、誰も私のことを批判も非難もしなかったことだ。
自社のスタッフは諦めていたのかもしれないが。

私には休憩室の室長という不名誉な?称号がついたが、そこの会場のトップすら、私を非難はしなかった。
私は疲れていたので、いつでも担当を外してもらって構わないくらいの勢いだったが、その人は
「君、もう、あそこの机を使っていいから、パソコンをここに持ってきて仕事すれば?ほら、あの電源使っていいから。」と笑った。
やがて、休憩室に内線電話がつき、本当に休憩室で仕事ができるようなことになり、便利にはなったが、本当に休憩したい時は外に行くことにした。


なぜだか、東京にいる自社の社長は私が休憩室にいることを把握していた。
彼からは、「おまえ、また、休憩室だろう?!」と、携帯電話に時折連絡が入ったが、本気で怒っている節はなかった。


2年ほど続いたその時期が、その後の私のその会社でのキャリアを決めた。

そして、会社を辞めるまで、上司は、「頼むから、君は、ふらふら遊んでおいてくれ。まじめにやろうと思うな。会社には来ても来なくてもいい。それが一番会社の役に立つ。」と言い続けた。

私が手に入れる仕事が、いつも、私がただおしゃべりを楽しんだ相手からの仕事だったからだ。
私がおしゃべりしていた時、彼らはえらくもなんともなかった。
私は地位で人は選ばない。
誰が相手でも同じだ。
違いがよくわからないのだ。

おしゃべりを楽しんだ彼らは、勝手に出世していき、そして、私に仕事をくれた。

貰う仕事はいつでも、「あなたがいいと思うようにしてくれていい。任せる。」と、待遇がいいことが多かったので、いい仕事がしやすかった。


暗躍、と思った時、真っ先に浮かんだこの記憶。
あれも暗躍だったのだろうか?

だとすると、暗躍とは、休憩室のことなのだろうか?

休憩室は大層楽しい空間だったが、仕事中に遊べということか?


しかしまあ、なぜ、誰も怒らなかったのか、今でも不思議。