ある霊能者のはなし*4
ある霊能者のはなし*3のつづき
先祖って何のことやと思う?
ある霊能者の友人は、にやりと笑った。
私は、おじいちゃんとかおばあちゃんとか、もっと前の血が繋がっている人、と答えた。
「そう。そうやけど、それやとさ、最終的にはルーシーひとりに全員たどり着くやん?」と彼女は言った。
ルーシーとは、最初の人類の名前らしい。
アフリカ大陸で発見された化石。
彼女は言った。
「私、考えとってん。
私は仕事やから、そりゃ、あんた、Yちゃんが思うような考え方ちゃうで。
何を先祖と呼び、何を先祖供養と呼ぶか真剣に考えてんから。」
彼女いわく、何でも、21世紀の霊能者には、過去の霊能者にはなかっただろう苦悩があるらしかった。
霊能者のこれまでの常識、が、通用しなくなってきたのだという。
「鎖国の時代に、ほとんど全員が仏教徒みたいな時は良かったわけよ。
あんまり科学も発展してなくてさ、なんでも不思議でいけた時代はええわ。
やけどさ〜、普通に疑問やん?
先祖供養せんかったら、幸せにはなれませんって、ほんなら、イスラム教徒とかクリスチャンはどないなるん言う話やんか?
今は無宗教の人も多いやん?
金銭的にお墓はない人もおるしなあ」
彼女は楽しそうに笑っていった。
「現代っこは考えることがいっぱいあって大変やで」
ほんとにねえ、と私も笑った。
ほんで、と彼女は言った。
「私の結論としては、先祖は、つまり自分のこと。
いろんな人から遺伝してる遺伝子が体の中にいっぱいあるやん?
そやから、先祖供養を本気でやりたいんやったら、思いっきり幸せになったらええねん」
彼女はだいたいヘラヘラした人だが、これは真面目な顔で言った。
「それが一番難しいねん。
線香立てたり、墓に参ったり、そんな方がずっと簡単。
感謝も簡単。
そやけど、本気で先祖供養したいんやったら、自分のことをやらんとあかん。
で、先祖供養を気にしてくるお客さんの特徴は、守護霊のことを聞いてくるお客さんと似てんねん」
やる気のない守護霊?と私は笑いながら聞いた。
そう、と彼女は笑って、それから言った。
「考えてもみてや、先祖はもう自分の人生やりきった人やで。
子孫に望むことがあるとしたら、幸せに、や。
私、それ以外のこと、感じたことあらへん。
自分の墓のこととか言う先祖おったら、そりゃ、先祖ちゃうわ。
先祖のふりしたなんかや」
なんかて何よ?と私は聞いた。
彼女は「だから、わたし、霊能者やって言ってるやんか!」と爆笑した。
ああ、、、。
そうだった。
「人生がうまくいかへん理由に、身内が関係するのは、そりゃあるで。
あるねんけど、ほとんどの場合、生きてる身内が関係するのであって、死んだ身内は関係ないと思うわ。
人生うまくいかん理由に、性格とか遺伝子の中に含まれてるもんもあると思うけど、それは自分のはなしやん?
ご先祖さんは、それぞれの人の中におる。
だから、誰でも感じられるねん。
先祖供養は、自分が幸せになればそれでええねん。
それ以外を望む存在は、先祖ちゃう」
彼女は言い切った。
それから、まあ、たま〜に、ややこしいのもあるけどとにやっと笑った。
そこは内緒なのだそうだった。
彼女の話はまだ続いたが、ひとまずここまで。