胃酸

胃酸。

このたったひとつの要素は、私の体調を支配している。
これが多いと、咳が出る、お腹が張る、胸が痛い、食欲なくなる、疲れやすくなる。
とりあえず、調子が狂う。


子供の頃、私は毎日、漢方の胃薬を飲んでいた。
祖父がいつも持ってきてくれる病院が調合した薬を飲んでいた。
大人になってある時期、薬は必要なくなった。
ちょうど祖父が死んだ頃。
薬が手に入らなくなったと同時期に。

ただ、体が疲れると、最初に胃に来るのは続いていた。


私が、あまり太らないのは、胃が弱いのもあるかもしれない。
月に2日くらいは、何も食べない日がある。
胃が痛い時は食べない。
その方が治りが早いということに経験的に気づいたし、食べたくない日が2日くらいはある。
胃が、休ませろと言うのだと思う。

親と暮らしていた時は、それができなかったから、ずっと胃薬が必要だったんじゃないかと考えている。

1日3回食べても、胃は痛くなるので、現在は、お腹が減ったら食べるシステムを採用していて、日によって、食事時間も回数も違う。
夕方食べたら、もう食べない。
私の胃は、休憩がたくさん必要だから。


しかし、精神的ストレスに強くなり、あまりそれを感じなくなった去年の夏、私は再び、毎日胃薬が必要になった。

薬を飲んだらどうしたことか、それまで、別のことが理由だろうと思っていた咳が止まった。
びっくりした。
咳は随分前から出ていて、私は、呼吸器の関係かと思っていたが、どうも違ったようだった。


お医者さんは、これは一生続くかもしれないし、突然治るかもしれないし、まあ、あんまり深く考えずに、痛かったら薬を飲むで気長に様子を見てねと言った。


そして、やがて、それは突然治った。
胸の痛みも、咳も消えた。


しかし、先月寝込んでいた時に、再発した。
精神的ストレスは感じていなかったが、ストレスだったのだろう。
そりゃそうだ。
突然死ぬかもしれない毎日。
私が、どんだけたくましいとしても、そこにストレスはあっただろう。
多分。
記憶としては、なかなか面白い日々だったことになってるから、ストレスは記憶されてないが。


そして、再び、私は胃薬を飲み始めた。
けほけほ咳が出始めたからだ。
咳が出ると、胃酸。
私がやられるのは、食道だ。

ピロリ菌がいない人は、これになりやすいのだとお医者さんは言った。
(最初に検査したら、私はピロリ菌がいなかった。)
食道が胃酸でやられるのは、前は老人の病気だったが、今は、若い子にもいるらしい。

前に通っていたお医者さんとは、寝込んだ流れで喧嘩していたので、新しい病院に行った。

新しいお医者さんは、言った。
体質もあるから、治そうとか思わず、気楽に付き合ってください。
とりあえず1ヵ月は飲んでなさいね。
その後はまた様子を見て。
合う薬はわかってるわけだから、飲んでればいいわけだし、あなたの薬は長く飲んだからと言って、どうもない薬なので。


まあ、胃酸はサインだな。
あなた、無理してますよのサイン。
ありがたくお付き合いしましょう。
 

ちなみに、子供時代の私には、学校、母、という2つの、他人の心情、感情に気を配らなければえらい目にあうという気遣いを学ぶ過程における大ストレスがあった。
それは、今考えれば、胃を悪くしてでも、大ストレスでも学んだ方がよかったことなので、仕方なかろう。
子供時代は、トレーニング。


現在は、無理しないで、疲れてるから、今は、自分を最優先にしなさいよのサイン。
そこに学びはなく、優しくしてよというお知らせ。
疲れた理由はどうでもいいが、(過去だから)、痛みと咳はめんどうなので、特に今のご時世、咳は他人に恐怖を与えるので、素直に聞いておきましょう。