結婚のある一面
夫の母と話したとき。
数年前に夫の父が倒れた時、私の存在が救いになったと夫の母が言った。
私が常に冷静だったからだ。
私は血が繋がってないし、みんなと過去を持ちませんしね、と私は言った。
あまり感情を動かさずに、物が考えられたからと。
夫の母は、嫁というシステムは、なかなか意味があるなとあの時初めて思ったと言った。
娘の言うことにはカチンときても、あなたが言うことは素直に聞けたりする、過去がないからねえと。
私は、そうなんですよね、と言った。
過去を持たない、今しかないってやりやすいですね。
悪者が必要な時は、自分がなればいいですしねえ。
心無い一言が必要な時は、自分がすれば、みな罪悪感を持たずにいけますもんね。
夫の父は、延命拒否の書類に3回もサインをしていたが、それを知らなかった救急隊員の人に、人工呼吸器をつけられてしまい、すったもんだがあったのだ。
一度ついた人工呼吸器を外すのは、現在、日本では違法だ。
お医者さんが殺人者の扱いになる。
自発呼吸がないのだから、外せば死ぬからだ。
夫の母は、夫の父の希望に沿わないことをしていることに苦しんでいた。
ただ、夫の父の意に沿うようにしようとすることは、すなわち、夫の父を死なせるかもしれない動きでもあった。
私は、いろいろ調べるために、自分が、リビングウィル協会に入って、延命拒否のサインをした。
リビングウィルに賛同している病院のリストが、その協会に加入しないと見れなかったからだ。
そして知った。
賛同している病院の中でも意見は割れていること。
次に調べてまた知った。
理解のある在宅医療をするお医者さんに出会えれば、自宅介護が、一番自然死に近い状態に持っていけること。
夫の母と、2人で何度もいろいろ話しあった。
夫の母は、元看護師で介護施設にもいたことがあるのだが、家族になるとなかなか難しいわねとよく口にした。
最近、私は夫の母に言った。
うちの実家には、お嫁さんはいないので、そこが難しいんですよね。
お嫁さん、欲しいなと最近思いました、と私はあははと笑った。
夫の母が言った。
私が一緒に考えるわ。
私があなたの話を聞くわ。
なんでも話してちょうだい。
必要なことは相談しましょう。
血の繋がらない家族は、意味がある、と感じた。
これは、結婚のある一面。
血の繋がらない家族は、わずらわしいというイメージが強いようだが、私の血の繋がらない家族がわずらわしかったことは、ここまで一度もない。