本当のところは

少し前に、著名な脳科学者の大学教授の講演を聞く機会があった。
私は仕事で行っていて、時計を気にしながらだったし、ところどころは聞けなかった。
その脳科学者のファンだった夫も会場に来ていて、後から夫から詳しく聞いた。

それは、オキシトシンというホルモンについての講演だった。
その中に、幸せ感に多大に影響するとよく知られているそれも、過剰すぎると、太ったり、他を排除する傾向がでるというような話が含まれていた。

ほどほどがいいようだ。

オキシトシンは、外からの刺激で出るため、ふわふわのタオル、肌触りのいいパジャマ、柔らかな枕カバー、そういうものがオキシトシンを出すには非常に効果があるという話だった。

赤ちゃんを抱えたお母さんは、たくさん出ているらしい。
赤ちゃんは、ふわふわ柔らかいからだろう。

また小さな頃に、オキシトシンをたくさん出したかどうかは、体の丈夫さにも関係するというようなことも言っていた。

今では倫理的に許されない刑務所で生まれた、母親が犯罪者の赤ちゃんを使った実験が、昔イギリスで行われ、その結果、わかったのだという。
母親から引き離し今でいうネグレクト(ほったらかして無視する)を意図的にした赤ちゃんと、そうしなかった赤ちゃんに、明らかに生育に差が出たらしい。

なんとまあ残酷な実験で、そんなことは実験しなくてもわかりそうなものだが、それは私が現代を生きているから感じることなのかもしれない。
命の重みもまた時代や場所によって異なる。

たまたま、命が一番尊い時代、場所に、今、私がいるだけだ。

戦争にでもなれば、命は一番尊いものとしては社会的には認識されなくなる。
認識されるなら、戦争はできない。
幸せかどうかなど、もっとどうでもいいことと扱われる。

肌触りのいいタオルやパジャマに、今、シリアでこだわれるかどうか。
難しいだろう。


オキシトシンは大事だと言える世界が、平和なのかもしれない。


というような話を、ある日、父にしたら、いつものように父は言った。

おまえの頭の中は難しすぎる。
そんな小難しいことを考えずに、イージーに生きろ。


同じ話を夫の母にしたら、夫の母は言った。

ほんとよね。
ああ、私も会いたかったわ。


また同じ話を母にしたら、母は言った。

あのテレビに出てる人ね。
いろんな仕事があるのねえ。
どんな人だった?


話のどこを拾うかは、本当に人それぞれで、人は同じようには聞いてないとは本当だと確認できた。
これは、クリーンランゲージが生まれるきっかけとなったことの一つである。


私がこの話から何を伝えたかったかというと、私はただ話したかっただけで、伝えたいメッセージ的なことは別になかった。
口を動かし、おしゃべりを楽しんでいただけだ。

話し手が、必ずメッセージを持っているというのもまた、大いなる思い込みのひとつかもしれない。


で、今、これを書いた中に私が伝えたいメッセージがあるかどうか。

それは読み手の好きに解釈されるのだろう、きっと。

本当のところ?
それは、内緒。