姪っ子との会話
姪っ子と私は、離れたところに住んでいるが、彼女が小さな頃から、割と会話はする。
またそう頻度は高くないが、彼女に何かあると、実家とシングルマザーの妹から、私に連絡がくる。
彼女と話してくれと。
何度か、彼女と2人で出かけたこともある。
姪っ子は、私に懐いている。
これは、妹と母の、私の得意なところを活用しつつ、いくらか子育て気分を味合わせてやろうという気遣いだろうと思っている。
それから、姪っ子は、私の話は素直に聞くからだ。
夏休み、受験生の姪っ子は、志望校を決めるのに悩んでいた。
第三希望に、母である妹がNOを出したのだ。
実家でピアノを弾いていた私に近づいてきて、彼女は言った。
「ママがあかんていうねん。」
なんで、その学校なの?と、私は聞いた。
別に理由はないと姪っ子は言った。
第三希望に悩むこと自体が、私にはよくわからなかったが、(第一希望が望みだから。私は第一希望しか考えないから)姪っ子は慎重な人だ。
そして、すごく小さなときに、人生とは予測のたたないものであるということを経験している。
彼女は特にその第三希望の学校に執着してないようだったので、それで私は、なぜママが、その第三希望はNOなのかを教えることにした。それには理由があり、私は、妹からその理由を聞いていたからだ。
「ママには内緒と言われてるから、私から聞いたって言ったらあかんで」と私が前置きすると、そばにいた父が笑った。
「お前、言ったらあかんのやったら、言ったらあかんやろう。なんでも喋るやつやな。」
私は、もう数年、これについては誰にも言わず黙ってきたが、妹が私に伝えているのは、必要な時があればそれを話していいということだと判断している。
言ったらあかんことは、私には言わんだろう。
なにしろ、私と妹の付き合いは40年以上に及ぶのだから。
私が話すと、姪っ子は、「なるほど!」と言った。
私がしたことは、姪っ子の頭を高校受験から大学に進めたことだった。
私は、姪っ子の受験のゴールを少し先に変えるのを手伝った。
それから、私は、で、あんたは何が好きなの?好きな科目は何?と尋ねた。
姪っ子は、迷わず、ない、と答えた。
彼女の成績は悪くない。
しかし、全部好きじゃないらしい。
私は、「何が好きなの?」と聞いた。
「走ること!」と、姪っ子は答えた。
私は、じゃあ、走ってなさいと笑った。
走ることは受験科目にはないなと思いながら。
それから私は、「教科書とか問題集は、テストの前日にだけ光るページがあるから、そこを覚えるのよ。そこは必ず出るから」と教えた。
父が「そんなことは経験したことはないぞ。いらんことを教えるな」と笑った。
私は「いえ、光ります。私はそれで点数を稼いだ」と胸を張って言った。
そしてそれから、まあ、それは勉強ではなくて、何にも身にはつかず、点を取るだけなんだけどと笑った。
でも、テストは点数だからね、前日にはそれくらいしかやることはないと、姪っ子に言った。
姪っ子は「Yちゃん、変。なんで教科書が光るん」と言ってケタケタ笑った。
光るものは光るのだ。
まともなことは教えない大人がひとりくらいはいてもいいと、私は思った。