教会ものがたり(2)
「提案があります!」
今朝、教会に着くなり、私は言った。
最近礼拝に来るようになった、目がクリクリっとした青年TくんやOさんやみんなは、新しい歌の楽譜のコピーを、手分けして、賛美ファイルに閉じていた。
私は、「あのね、礼拝の席順をね!」と、みんなに聞こえるように大きな声で言った。
「新しく来る人ね、いわゆる上座だとね、囲まれて怖いと思うから、一番逃げやすい場所、ここにね座ってもらったらいいと思います!」
私は、おっちゃんUさんがいつも座っている場所を指差して言った。
そこは一番下座、ドアが見える場所。
「僕も、ここが一番気楽やろなと思っとった」と、おっちゃんUさんが言った。
ほな、あんた、なんであんたがそこに座ってんねん?!という私の心の声は、そのまま声となり、おっちゃんUさんは、
「だって、下座だから」と笑いながら言った。
「この部屋の作りで、上座は怖いよ、クリスチャンに囲まれて。
勧誘されると思うもの。
早く逃げなくちゃ!って思うもん。
そんなの平和がない」と私は言った。
先週、だんなさんと一緒に来ていたOさんが、笑いながらうなずいた。
Oさんのだんなさんは、クリスチャンではない。
先週、居心地が悪そうだった。
「礼拝はいいみたいなんですけど、分かち合いとか声を合わせたお祈りとかが、ちょっとねって言ってました」とOさんは言った。
私は「気持ち悪いですよね。わかります」と言った。
私は、今は気持ち悪くないけど、気持ち悪い気持ちはよくわかる。
不気味なのよ。
それから、私は、大学時代に友達6人で行ったとある教会で行われたクリスマスのキャンドルサービスの話をした。
「みんなが声を揃えてアーメンって言うのが怖くて、全員、恐怖に怯えてね。
そのあと、お茶をどうぞって振る舞ってくれたけど、頭の中は、早く逃げなくちゃ!でいっぱい」と、私は笑った。
Oさんと青年Tくんは笑った。
私は、「逃げやすい場所に、新しい人は座ってもらいましょう。嫌なら途中でも帰れる場所に」と言った。
みんなは楽譜を閉じる作業を続けていた。
Yさんは、にやにや笑いながら、礼拝の楽器の準備をしていた。
おばちゃんTさんが、楽譜をファイルに入れながら「Yさんに聞かなくていいの?」と言った。
私は、「Yさんは、礼拝前は、きっと楽器の準備が忙しいと思ったから、先に話してあります」と言った。
そして「本当は、どこに座るか、来る人が自分で自由に決められたらいいんだけど」と言った。
「まあ、ほな、今日から座る場所を変えようか」とおっちゃんUさんが言った。
私は、「あ、あと、ほんでね、Uさん、聖書読む時、目が怖いから、新しい人と目が合わない場所に座ってね」と笑った。
おっちゃんUさんが、「奇遇やね。僕も今日からそうしようと思っててん。僕の目はきついからね」と明るく楽しそうに言った。
どうした?!この軽やかさはなんだ?!
私は「目力があるからね!」と、珍しく優しく言い直してみた。
「まあ、狭いのが悪いんだけど。私、狭い!って、神様に文句を言ってみた」と私が言うと、おっちゃんUさんと、おばちゃんTさんが慌てて
「ご提案ね、ご提案」と言った。
私は「まあ。でも、文句だけど。広い場所をくださいって」と言った。
2人は、くすりと笑った。
その後、礼拝がはじまり、最初のお祈りで、Yさんが、
「神さま、あなたにはいつも感謝しています。あなたの与えてくださった場所にも感謝しています」と言ったので、私は、ぷっと吹き出しそうになった。
「君もフォローが大変だねえ」とジーザスはYさんに言ったかもしれない。
私は心の中で、「でももう狭いですから、次の場所をくださいね」と、勝手に付け加えて祈った。
ともかく、クリスチャンやお祈りを気持ち悪いと思う人の気持ちを尊重できることになって、私は、満足だった。
ジーザス、ありがとう。
おっちゃんUさんが、「あんた、ちゃんと覚えておきなさいよ」と言い、私は
「うん。私は、クリスチャンになる前の気持ちを忘れないよ。それを忘れたら終わり」と言った。