いい親

ほう、それならうちの親はすごくいい親だ。

27歳。
私は目から鱗な話を聞いた。

黒板の前に座り、M先生が語っていた。
発達心理の授業の時だったように思う。

M先生は、「こんな家、一刻も早く出て行ってやる」「早く家から出たい」「なんてわからずやな親なんだ」と子供に思わせるのがいい親だ、と語った。
当時、友達家族、という言葉が流行っていて、M先生はそれを憂いていた。

親が友達になってしまったら、その子の親はどこにもいなくなる、親は楽しいでしょうがね、と先生は言った。

M先生は言った。

親の仕事は、子供を自立させ、親なしで生きていけるようにすることだ。
居心地のよい実家を与えることじゃないと僕は思うし、長年の臨床経験から、居心地のよい実家は事が長引く傾向があるのを見てきたので、この先がちょっと気になりますね。

その時、M先生はすでに80歳くらいで、国立大学病院の精神科で精神科医として勤務し定年した後、児童相談所で臨床心理士として、子供達のことをしたり、講義をしたりしていた。

私がクリーンランゲージに出会った時、それを新しいと思わなかったのは、M先生の思想とその技法が非常に似ていたからだ。
M先生から教わったけれどなかなかクライアントにうまく体感させられなかったものを、実践するための質問を手に入れたと私は思った。


話は戻って、当時、私は実家との関係が壊滅状態にあった。
母のコンディションもめちゃくちゃ悪かったし、両親の関係性も崩壊していたし、なおかつ、母は祖父母の介護をしていた。
私自身も、まだ薬を飲んでいた。

私は結婚中だったので、両親と私は、一緒に住んでいなかったが、実家に帰るのは非常に気合いが必要だったし、二時間以上滞在すると帰ってきてから吐いた。

そんなわけで、M先生の話を聞いて、私は目から鱗で、へえ、と思った。


という話。