クリスマスイブの夜

ゆかりちゃん6歳。

明日はクリスマスだ。
12月のはじめにリビングに飾られたクリスマスツリーには、毎日、少しずつプレゼントの包みが増えていき、ゆかりちゃんと妹は、学校と幼稚園から帰ってくると、ツリーの下をチラチラ見たり、包みを振ってみたりして毎日過ごしていた。

クリスマスまでに包みを開けたら、サンタクロースは来ないと、お父さんとお母さんから聞かされていた。

それで、妹と、これはきっと〇〇、これはきっと〇〇、と包みの中を予想していた。
2人はリカちゃん人形がその中にあることを熱望していた。
妹は、リカちゃん人形が何かを知らなかったが、妹はいつでも、ゆかりちゃんが欲しいものを真似して欲しがった。
妹は、なんでもゆかりちゃんの真似をするのだ。


そしてついに訪れた明日はクリスマスというその日。
ゆかりちゃんは、学校のクリスマス劇に参加していた。
ゆかりちゃんは星の役で、大きい子供たちがいろいろな役のかっこうをしている側で、星を持って歩き回る役だった。
腕が疲れる、、、とゆかりちゃんは思った。

学校から帰ると、お母さんの友達のモニカの家に家族で夕食をごちそうになりに出かけた。
ゆかりちゃんは、優しいモニカが好きだった。

モニカの家のリビングには、大人と同じ背の高さの女の人の人形が飾ってあった。
それはマリア様だった。

ゆかりちゃんはマリア様に、そっと謝った。
マリア様に謝れば許してもらえると、学校で習ったからだ。
その日、ゆかりちゃんは、前の日に、妹の髪を引っ張ったことを謝った。
ゆかりちゃんは、お父さんとお母さんには相変わらずがんとして謝らなかったが、マリア様にだけはごめんなさいと言うことにしていた。
マリア様は、ゆかりちゃんを叱らないからだ。

ごめんなさい、だけど、妹も悪いのよ、とゆかりちゃんはマリア様に心の中で言った。

山のようなトルティーヤとチョコレートケーキを食べて、ゆかりちゃん達は家に帰った。


そして、その夜。
ゆかりちゃんは、サンタクロースを見た。

その夜、サンタクロースはミスをした。
プレゼントの包みをゆかりちゃんの頭の側に置く時に、ゆかりちゃんの耳を包みが踏んだのだ。

いた、、、と思って、ゆかりちゃんは目をそおっと開けた。
すると、中庭に面した窓が開いていて、そこに、サンタクロースが立っていた。

ゆかりちゃんは、サンタクロースは太ってないんだな、と意外だった。
そしてまた寝た。
眠くてたまらなかったのだ。


ゆかりちゃんは、朝、起きると、リビングへ走っていった。
お母さん!サンタクロースを見た!と言うために。

サンタクロースを見た!と騒ぐゆかりちゃんを見て、お母さんは、ちょっと驚いた顔をして、それから「まあ。お母さんは見たことないわ。どんな人?」と聞いた。

ゆかりちゃんは、サンタクロースが太っているのは嘘だ、太ってなくて、そして、窓から出入りしているらしいと言った。
きっと、ソリが外で待っていたのよ!と。


お母さんは大笑いをした。
お父さんは新聞を読んでいた。


お母さんは言った。
ゆかりちゃん、それより、サンタクロースは何をくれたの?

ゆかりちゃんは、サンタクロースに会った興奮でプレゼントを開けるのを忘れていた。

たたたとベッドのある部屋に戻り、ゆかりちゃんは包みを開けた。
ブーツ型のローラースケートが入っていた。

それからゆかりちゃんはローラースケートをかついだまま、クリスマスツリーまで走った。
すでに妹がしゃがみこんでいた。

開けてもいい?と、2人は聞いた。

学校から帰ってからね、スクールバスが来ちゃうわよとお母さんは言った。

早く着替えなさい、と言われて、2人はしぶしぶ立ち上がった。

ゆかりちゃんと妹が着替えに部屋に行くと、リビングから、お父さんとお母さんの大きな笑い声が聞こえてきた。

なんだろう?と、ゆかりちゃんは思った。