ある霊能者のはなし リターン
ある霊能者の友人のはなし。
今日はおやすみ。
だから、怪しい話を致しましょう。
なぜに、彼女が、そんな世にも怪しい仕事をしているのか。
そのきっかけは何だったのか?
私が彼女に、だいたいなんなん、霊能者って、と聞いた時に、彼女がした話。
「知らんがな、私やってこんなことになるとは思わへんかったわ。私は、普通に暮らしてたんやから。だいたい、怪しいやんか。怪しいの、私キライやねん」と彼女は言って、それから、ちょっと信じがたい話をした。
これを書くにあたって一応許可はとったが、彼女は、まじで、私がだれかわからんようにしてよとしつこく言っていた。
怪しいの、私、キライやねん、と。
自分の仕事を人に知られるのを彼女は嫌う。
私と彼女は、たまたま偶然知り合ったのだが、彼女は、私にもなかなか自分の仕事は言わなかった。
彼女は独身だが、フラフラしている人のように見え、お金には困っている様子がないので、いったい何でご飯を食べているかがしばらく謎だったのだ。
「あれは、お盆の夜やったわ」
始まりがお盆のあたりが、霊能者らしい。
「寝てたらな、金縛りにあってん。生まれて初めて!」
彼女は言った。
ますます、霊能者っぽい話の流れだ。
私は、疲れてたんちゃうの?と言った。
「ほんで目を開けたらさ、体の上にさ、落ち武者がな、、、」と彼女は続けた。
落ち武者?!と私は爆笑した。
彼女は笑わず、うん、と言った。
「落ち武者。めっちゃ怖いで、Yちゃん。
体の上に落ち武者おったら」
そりゃそうだろう。
ほんで?と私は聞いた。
「ほんでな、その落ち武者がめっちゃ怖い顔して言うねん。おまえだけが幸せになっていいと思っているのか?って」
霊って喋るん?と私は聞いた。
知らんがな、と彼女は言った。
「ともかくそう言って、私をにらみつけて、消えたわけ」
落ち武者が?と私が聞くと、彼女も、落ち武者が、と繰り返した。
それが理由?と私が聞くと、彼女は、それが理由、と答えた。
彼女は詳しくは語らなかったが、そのあと、仕事を始めるまでにはいろいろあったらしいのだが、一番の理由は、また落ち武者が現れて怒られたら怖いというのが、彼女が怪しい怪しいと感じながらも、仕事を続ける理由だそうだった。
へえ、と私は言って、もう一回、それが理由?と聞いた。
彼女は、しつこいな!と言って笑った。
それで、私も笑った。