私の婚活*3

2で書いた知人はさなえさん(仮名)という。
さなえさんは、私より5つくらい年上だった。
さなえさんと出会ったきっかけは、仕事絡みだった気がするが、よく覚えていない。


私とさなえさんはやがて仲良くなり、そして、さなえさんは言った。
「結婚しなさい。」

当時、私には、結婚しろと言う人が何人かいたが、さなえさんもその1人だった。

さなえさんは言った。
「あなたが幸せなのは見てればわかるよ。楽しそうに恋もしてる。
でも、あなたはきっと、人の相談に乗り続けるよ。
今はいいよ。
でも、あなたもやがて歳を取るよ。

想像してみて。
60歳になった自分を。

その時、あなたの周りにある人間関係は今とは違うよ。
あなたは、お友達が多いけど、おそらくその人数は今より減るよ。

あなたは1人で暮らしているでしょ。
そして、人の相談に乗ったり、世話を焼いたりして、疲れて家に帰るでしょ。
あなたは1人なの。

あなたが相談に乗ったり、世話を焼いたりした人たちは、なんだかんだ言っても家族がいたりするわけよ。
その時、あなた、自分のクライアントや仕事相手を、これっぽっちも妬まずにいられる自信はある?」


私は、遠い未来を想像してみた。
そして言った。
「ないですね、その自信は。」


さなえさんは言った。
「結婚しなさい。あなたのところに来る人たちが欲しいと思うもので、わかりやすい幸せは、全部、自分の手に入れておいた方がいいよ。」と言った。

その方が人の役に立てると、さなえさんは言った。
そして、さなえさんは、婚活する気になった私に最大限の協力をしてくれた。


私が結婚しようという気になるところから、私の婚活は始まったが、結婚しようという気になるためにすら、私は協力者を必要とした。

婚活を始めるのにすら、協力者を必要とした。

なぜなら、私は困っていなかったからだ。
むしろ幸せだった。
どこに結婚する必要があるか、本人はよくわからなかった。


結婚は、困っているからするものではないのだが、面白いことに、「今、困ってない」という人は割と多い。

でも、その人自身が、結婚とは結びつけてみないところが、結婚することで飛躍的に伸びることは実際に多い。


私自身は、おそらく、結婚していなければ、海外には行かなかった。
私は、結婚した後の方が冒険するようになった。
私は、結婚したことで不自由ではなく、もっと自由になった。
私に必要だったのは、自分の帰る場所が決まることだったのだろうと今は思う。
家族がいる場所が帰る場所。


ある人は、その時目の前にあった出世の可能性を結婚していなければ手に入れようとはしなかっただろうと言っていた。
その人は、結婚後、振り切れたように仕事をし、そして、今、その先の未来を考え始めている。


また、結婚後、それまでなんとなくうまくいかなかった仕事がうまくいくようになった人もよくいる。
私の夫もその1人だろう。


私が知る限り、それらの人たちは、結婚する必要性を特には持っていなかった。
自由にやっていた。
その人たちに、うるさかったり、世話を焼いたりしたのは周りだ。

他人から願うことを押し付けられるのはたまったものではないが、あなたにはこれが必要と他人が先に気がつくことが多いのは、結婚の特徴でもある気がする。



全ての人がそうではないと思うが、今、私自身もセッションをしていたり、人と話していたりして、その人が独身の時、時折、「その悩みは結婚すれば解決する」と感じることがある。
おそらく1人では解決しない。
おそらく1人では乗り越えられない。
友達ではなく、家族の力がいる。
そういう物事も、世にはあるようだ。


そして、結婚することで、その人の精神状態さえ変わることも多々ある。
よくも悪くも。


さなえさんが私に話してくれたことを、私は自分が結婚後、たくさんの人に話してきた。
それから、これが、前回の結婚と大きく違うのだが、私は幸せでい続けるため、結婚を持続させる努力をしている。

それが、さなえさんの願いでもあったからだ。

そして、実にたくさんの人の手をわずらわせて、私は婚活し結婚したからだ。


ひとつだけ言えるのは、さなえさんとの出会いがなければ、私は結婚してなかったということ。

私がまず出会う必要があったのは、男性ではなく、女性だった。



続く。