車中にて

おさげにセーラー服だったある三年間。
そのうちどこかの夏休み。
一年生だったんじゃないかと思う。
私は、夏休みの間だけという約束で、パーマをかけた。

夏休みに入って一週間後、私は妹と一緒に新幹線と電車に揺られて、中国地方の母方の祖父母の家に行った。

到着すると、祖母はすぐ、輪ゴムを持ってきた。
「このへんにゃあ、そんなちりちり頭の高校生はおりゃあせんで。あんた、帰るまで三つ編みしちょきんさい。はずしたらいけんよ。」


そうして私は再びおさげ髪となった。
あまり抵抗しなかった。
祖母に勝てるはずもなかったし、そもそも、祖父母の家で、私は昼寝ばかりして過ごしていたので、髪型はどうでもよかった。

おしゃれの意味が、意味をなさない環境でもあった。
おしゃれは対人間へしてこそ意味を持つ。

目の前は川と田んぼ、それから山、歩いているのは、じいちゃんばあちゃんばかりという環境では、おしゃれ心は薄らいだ。

じいちゃんばあちゃんは、赤ちゃんの私から知っているので、服装とは違うところで自分を見る。
背が伸びたとかそういうとこ。


昼寝をしていると、祖母が笑う声が聞こえた。
「ほんに、あのこは寝たろうじゃね。どんだけ寝るつもりかね。」

祖母は、思った言葉何でも口にする。
加えて口が悪い。


祖母の自慢は、青年団の李香蘭だったことだ。
確かに祖母の若い頃は大層美人だ。
私がこの祖母と似ているのは、まつ毛の長さだけだ。





ちなみに、母方の祖父に至っては、俳優のスカウトが来たほどのハンサムだったが、私は、全く、全く、似ていない。


というようなことを、ガタガタと各駅停車の電車に乗りながら思いだした。


祖母と叔母が待つ家、母が育った家はもうすぐだ。