ある霊能者の友人のはなし

久々に、彼女と会った。
彼女は相変わらず陽気に笑っていた。
そして、最近は、嬉しいことがたくさんあると言った。

彼女は、人と少し違う物の見方をするので、私は彼女の話を毎回興味深く聞いている。

私は、何が嬉しいの?と尋ねた。

彼女は言った。

みんな、先祖供養だの、前世にやり残したことだの、しょっちゅう聞いてくんねんけどさ。
最近は、ああ、そういうのが癒されていくねえって、よく感じんねん。

私が好きなんは、子供食堂。
むかし、戦争や飢饉で、飢えた子供はむっちゃおったやん?
お腹が減って死んだ子供なんか、世界中に溢れてたで。

最近はさ、子供が飢えないようにって、温かいご飯を提供するとこ、たくさんあるやん?

あれさ、その昔、お腹を空かして死んだ子供たちの魂、むっちゃ癒されてんで。
幸せな子供を見れば、幸せじゃなかった子供のまま死んだ魂は癒されんねん。


私は聞いた。
「妬んだりしないの?」


彼女は、あははと笑った。
そして言った。

そんなちっちゃい考え方を魂がするかいな。
人間やと思ったらあかんわ。
別モンや。

子供たちがお腹いっぱいになって、幸せになれば、それだけで癒される前世や魂が山のようにあるねん。

私な、浄化とかお祓いより、そっちのやり方の方が好きやねん。
だって、霊がわるもんにならへんやろ?
生きてる人間が幸せになったら、それで霊とか魂は気が済むねん。
まあ、浄化とかお祓いの方が簡単ではあるけども。


私は言った。
「幸せになるのは、手間ひまかかるもんねえ」


ほんま、それ、と彼女は言った。
だから、最近、嬉しいねん。
手間ひまかかることをやろうとしてる人が、むっちゃたくさんおるやろ?
子供食堂だけちゃう。
いろんなことが、最近はあるやん。
私、そういうのを見ると、嬉しいなあと思うねん。
ああ、世界が癒されていくって感じんねん。


私は笑った。
彼女も笑った。
そして、「ま、そうすると私の仕事は減るけどな、そしたら、違うことするから別にええわ。そもそも、この世で一番いらん仕事や、私の仕事。
みんなが、幸せになろうと努力してくれたら、私の仕事はいらん。」

なんとものんきな、と私は思ったが、口には出さなかった。