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ここ2年ばかり、クリーンランゲージ&シンボリックモデリングを少人数に教えている。
メンバーは全員、関西生まれ、関西育ちだ。


彼らはテクニック的には上達していく。
しかし、私は気になることがあった。
彼らが正しく質問を使おうとすればするほど、質問が不自然になるのだ。
どうにもわざとらしい。
滑らかなやりとりになりにくい。
ギクシャクしている。


何度か開いた別の勉強会でも、同じことを感じた。

非日常感ではなく、質問が耳残りしてしまう。
彼らの中には、10年以上、催眠療法を使う人もいたから、声質ということではないのは確か。
しかし、耳残りする。
クライアントの使った言葉を繰り返すところが耳残りするならまだいい。
耳残りするのは、質問の部分だった。


ファシリテーターの声が印象に残るセッションは、クリーンランゲージ&シンボリックモデリングでは、あまりよくない。
クライアントの集中がそれる。


標準語じゃなかろうか?という考えが頭をよぎり始めた後、私はさらに彼らを観察した。
どうにもぎこちない。
2年続けているので、さすがに質問を覚えていないということではなさそうだ。


そして、どうすりゃいいのさとなり始めた最近、私は1冊の本を読んだ。
私はその本を、まもなく開かれる年に一回の漫才大会をより楽しむために購入した。

漫才について分析している本だ。
その大会では、圧倒的に関西育ちの芸人が強い。
本の中では、その理由を延々と分析してあった。

その中で、関西育ちの芸人が強い理由は、大阪弁にあるという箇所があり、標準語と大阪弁について、比較して解説してあった。
成り立ち、リズム、特徴。
全ての日本人にとって、標準語は歴史が浅いということもわかった。
親世代くらいまでは、東京の人も、今と同じ標準語は話していなかったということも。


これや!と私は思った。


そして、私は、なんとなくその漫才大会のSEに使われている曲をiPhoneで聞いてみた。
漫才師が登場するときに使われている曲だ。


そして、それから、思った。

関西弁でやろう。
日本語を考えるのではない。
狭い狭い範囲に的を絞ろう。


私が最も得意とする言語、日本語の中の、最も得意とする方言、関西弁、大阪弁に的を絞ろう。

私が教えたり、セッションしたりする人のほとんどは関西人だ。

的を絞ろう。
それでいい、と、私は思った。


すでに手元には、数年前に、余興で遊び半分に作った関西弁のクリーンな質問一覧表があった。
20人ばかりの人に、クリーンランゲージ&シンボリックモデリングの導入部分を1時間半で説明するために。

その時、関西弁だけは、And問題が解決していると思ったのも思い出した。
Andは、セッションの中で、最初から最後まで使われる単語で、流れやリズムを作る。

関西弁は、リズムが非常に大事だ。

関西弁は、全く同じ意味で違う言い回しのAndを持っている。
関西弁でなら、リズムは簡単に作れる。
私は、得意なところ、簡単なところからいこう、と思った。


テレビの中では、最近、関西出身のみなさんは、なまりを直さないまま話していることも多い。
関西出身の人だけじゃない。
他の地方出身の人も、地方のなまりを残したままのこともよくある。

標準語と関西弁は共存できるはずだ、やってみよう、と思った。

同じでなくていい。


4年越しの悩みから、解放された瞬間だった。

あとは、これを英語でどう説明するかだが、、、、説明できる気がしないので、後回しにしよう。
それがいい。

関西弁で使うクリーンランゲージ&シンボリックモデリング。

考えるだけで、笑いがこみあげてきた。
おかしなことが始まると思ったからだ。

おかしなこと。
funny。
クリーンランゲージを説明してある英文に、割とよく登場する単語だ。


相性はいいはずだ。
ラテンな地域にお住まいのみなさまにお届けするクリーンランゲージ。

やってみよう。
試してみなくちゃわからない。