最初の結婚

 

最初の結婚が終わった後、まず、妹が言った。

「離婚すると思ってた。お姉ちゃん、結婚式の日、お嫁さんのキラキラ感がなかったもん。」


しばらくして、父が言った。

「お前の離婚に反対しなかったのは、お前が、相手を人間として嫌いなんやというように見えたから。そもそも、新卒ですぐ仕事でつまづいて、思うようにいかないから逃げただけに、お父さんには見えてたしな。」


しばらくして、結婚式でスピーチをしてくれた友人が言った。

「あれはあかんわ。うまくいかないと思ってた。実家、出たかっただけやろ?」


しばらくして、友人達が言った。

「みんなで笑っててん。なんで結婚すんの?って。」


全員、はよ言えや!と、私は笑った。


やりたいようにしかしないんだから、言っても聞かないでしょうよと、全員が言った。


私は、離婚も結婚も、幸せになるための選択だと思うが、離婚は疲れるので、逃げるための選択に使うことは、おすすめしない。笑



さて。


本人は、結婚前に、四回、破談にしようとして失敗していた。

やめておけと、何かがせっついたからだ。

けれど、流れは止まらなかった。


結婚式の日、会場に現れた私に、会場の担当者の人が「来てくれてよかった!」と言った。

私が、試食会をすっぽかそうとして、美容院にいたところを、父に捕まり、二時間遅刻して現れたという前科があったからだ。


今なら、そのような結婚はしないが、私にも二十代の頃はあったのだ。

結婚を決めたのは二十三歳。

まだ若かった。


相手は、お金持ちで、新居にマンションを買ってもらった。

私は、それも気に食わなかった。

自分たちが住む場所くらい、自分たちに決めさせてくれよと思っていた。


しかしながら、相手の親には大変よくしてもらって、私は、うちのお嫁ちゃんと呼ばれて、可愛がってもらった。


うるさいことは何一つ言われず、時折、高級スーパーの袋に入った高級食材を山のようにくれた。

家に遊びに行けば、贅沢な食事が並び、私は、手伝いすらせず、時には、そこのソファーで昼寝までした。

年越しは、淡路島の外資系ホテルと決まっていた。

高級おせちと共に、私の一年は始まっていた。


彼らが私に望んだことは、ただ一つ。

綺麗にして、幸せでいてくれればそれでいいだった。

自営業では、経営者の奥さんは、経済状態を表す広報だ。

私は好きなだけ百貨店で服を買い、化粧品を買い、ブランドのバッグを持った。


経済的な裕福さは、だが、しかし、幸せには関係しなかった。




二十九歳、私は、その暮らしを捨てた。

安月給で働くサラリーマンの一人暮らし生活は、自立の二文字の喜びに満ちていた。


時は流れ、再婚し、私と夫は、夫の両親が持つ古いマンションの一室で暮らしはじめた。


私は、結局、家は最初は助けてもらえるんだなと思った。


やがて、今住む部屋を見つけた私は、内覧の時に、ひっと言った。

その中古マンションは、私の最初の結婚と同じ時期に建築されていた。


その部屋は、間取りが、以前の結婚で住んでいた部屋と全く同じだっただけではなかった。

キッチンと洗面所の扉が全く同じだったのである。

キッチンに一つ、あまり見ない作りの扉がついているところまで。

サイズ、見た目、何もかも同じだった。


この扉はなんでしょうね?と首を傾げた不動産やさんに、私は、それはねと、扉の使い方を説明してあげた。


その時、私の1度目の結婚は、間違いだったと、私ははっきり思った。

もしかしたら、最初から、このマンションは、私のものだったかもしれないと思った。


今の夫は、私の最初の結婚の時点で、私の人生の中にはすでに登場していた。


マンションのキッチンと洗面所は、まだきれいで使える状態だった。


不動産やさんはもったいないと言ったが、私は、そこをリフォームした。

思い出すからだ。

そして、自分が好きな今時のキッチンと洗面所を入れてもらった。


お金は、夫が出した。笑



二度目の結婚後、人生は、恐ろしくスムーズになりはじめた、

引越し後、さらに、そうなった。


自分の人生が、パチンとはまる感じがした。

そして、私は、多くのことを望みはじめた。


私は、経済的な裕福さは、私の幸せと関係しないことを知ってる。


けれど、私は、残りの人生、自分の力で、それを手に入れていくことを決めた。

手に入るだけ。


(今も困ってない。)


自分が使うためではない。

自分も使うだろうが、分けるためだ。

正確には返すためだ。

私は、アフリカに返さなくてはいけない恩がある。



与えられることが当たり前だった若い自分は、分けることに無頓着だった。

私の最大の失敗は、自分のことだけを考え、同時に、自分のことを考えなかったことだ。


痛みから逃げることを考え、望みを考えなかったことだ。


たった一つの選択が、二十年のロスを生んだ。

けれど、それすら、今はリソースとなりつつある。


SFが説明しやすいから。笑


とすると、やはり、あれは、失敗ではないのか?という話もまたある。


失敗か成功かを決めるのは、今の状況。状態。

今がよければ、あれがあったからと言える。

今が悪ければ、あれのせいでと言う。


全ては、今が決める。


とまあ、そんなこんなで、私の二度めの結婚は、まもなく9年。

前回のダブルスコアを達成だ。


二度目の結婚は、周りがありえないほど喜んでいた。

それだけは、よく覚えている。


今回の結婚についてのあとの総括は、死ぬ時にしたいと思う。