満たす
私は小さい時から箱が好きだ。
箱の中に入って遊ぶのも好きだったし、折り紙で箱を作るのも好きだった。
空間の中に入ったり、空間を作ったり。
さてさて。
作りたい箱が一つあった。
カードの商品用に。
もう数年。
私は、その商品が入っている箱が気に入らなかった。
ちゃちい。
それは、おまけで作ってもらえる箱に入っていた。
私には箱さえよければ、もっと売れるという確信があった。
遊びで作った商品は、私自身はほったらかしているのに、数年の間に、なぜだか、ロングセラーの気配を見せ始めていたからだ。
私自身が宣伝に熱心でなかった理由は、また、箱だ。
納得していなかったから、宣伝する気にならなかった。
商材写真からも箱は抜いた。
中身がいいのはわかっていたが、私は見てくれを気にする。
また、何人かの友人も「箱だね」と言った。
わかっていた。
箱は大事だ。
印刷で作る化粧箱のサンプルまでは作ってもらったことがあったが、話が進まなかった。
貼り箱か?ということになり、紙のサンプルを工場まで見に行ったこともあるが、話が進まなかった。
納得がいかない仕事をそのままにしている気持ち悪さがずっとあった。
それでも、商品は静かに売れ続けた。
そして、昨年、箱に入らないカードが2枚登場した。
カードは、作りたいから作っているのではない。
うまく言えないが、それは、勝手に向こうがカードにしておくれとやって来るのだ。
色や言葉が。
私と相方さんが話し合う時、ふたりとも、カードを擬人化して話していることが多い。
カードたち自体も、また、チームメンバーで、まるでそれぞれに意見や主張があり、私と相方さんは、単にそれを書いたり描いたりしているような気がする。
そして、ただ、箱については、カードたちは興味はないようであると、私は感じていた。
昨年生まれた2枚が箱に入らないので、私はそれを限定発売にして、別にした。
イヤーカードという名前の。
そして、これで終わりだなと思った。
その2枚のカードは、次に作るカードへのブリッジ、橋渡しのカードだと思ったからだ。
そこから一年、次に作るカードは別ものではない、ステージは違うけれど、すでにある同じカードの仲間だということに私は気がついた。
すでに存在したものは、マイナスからゼロまで持っていく行動のためのカード。
欠けたもの、傷ついたもの、余分なもの、人生の中の問題を解決していくためのカード。
そして、テーマだけ、2年前には決まっていた追加するカードは、ゼロからプラスにする行動のためのカード。
喜びを広げていくためのカード。
そして、私はさらに気がついた。
だから、箱が作れなかったのか!
枚数が足りなかったから、ちゃんと揃ってなかったから、箱が作れなかったのか!と。
箱は、中身を入れるためのものである。
中身のサイズが決まっていなければ、箱は作れない。
65枚?64枚?
少し変動がありそうだがその辺で、カードはそのあたりの枚数だ。
今度は、確実にこれで完成だ。
だって、最後のカードの単語は、終えるだったもの。
終わりやな?!今度こそ!と、私は強く思った。
ご存知でしょうか?
三次元の商いには、信用と信頼が大事な要素であることを?と、私は、誰に言うともなく思った。
ともかく、箱を満たすものがようやく決まった!と、私は思った。
箱が作れる!
びっくりするくらい、私は嬉しかった。
箱の中を満たせる。
ただ人の幸せを願って作ったもので。
ただ遊びながら、楽しんだ、喜びしかなかった作業の中で生まれたもので。
相方さんとの友情を育んでいく中で生まれたもので。
箱の中を満たせる。
そうやって作ったゲーム、おもちゃで。
そして、何より。
やっぱ、私は、ただ箱が好きなのである。
とても満ち足りた気分。