ルーツを探す旅

ある夏、私はお墓探しをしていた。
父方の先祖の墓。

お墓詣りをしようとしたのだ。
また、自らのルーツを辿ってもいた。
興味本位だ。

父と母は、そもそももとは中国地方の家の出身で、母方は今も親戚がそこにいる。
父方は、祖父母の代に大阪に出てきているから、親戚もみな大阪にいる。

ある夏、私は二泊三日で母方の祖母の家に泊まりに行き、仲のいい叔母夫婦に付き合ってもらって、父方のお墓を探した。

瀬戸内海に浮かぶ小さな島や海辺を。
この辺だろうという場所を、一日中、叔父の運転でくるくる。

楽しかったけれど、手がかりはさっぱり見つからず、夕方、らちがあかないと、私は母に電話した。

母は私が田舎に行くことを知らなかったので、あら、あなた、おばあちゃん家に行ってたの?と少し驚いて、それから、あっさり言った。

いくらお墓を探してもないわよ。
だって、そもそも四国だもの。
本家が四国で、それから分家でそっちよ。


まじか!?


父方の始まりは四国だなんて、その時まで私は知らなかった。

四国のどこ?と私は聞いた。
母は、結婚前に聞いた気がするけど興味がなかったから忘れちゃったわ、多分、愛媛だったかな、それ以上はわからない、漁師の網元だったのは聞いたけど、と言った。
本籍地は、お母さんの結婚時、すでに大阪になっていたからそこから先はわからないわよ。

母はそう言った。
私の旧姓は、四国にもゴロゴロしているだろう。
珍しくない苗字だ。

本籍地については、いろいろな考えがあるが、私の両親は、家族の始まりは夫婦だというそこだけアメリカ人みたいな考え方で、今、私の本籍地も、夫と最初に住んだ家になっている。
夫は、行ったこともない九州の場所が、それまで本籍地だった。
知らない場所なので変えちゃいました、と夫の両親に報告したら、笑っていた。
苗字は、じゃんけんで決めた。
夫が勝ったので、今、私の苗字は夫の家の苗字。

結婚するまでの私の本籍地は、私が生まれた場所の昔の呼び方の住所だった。
だから、そこからも辿れない。


話は戻って、おばあちゃんは知ってるはずよとも母は言ったが、祖母はすでに認知症で大阪の施設にいた。
その頃、もう、祖母と会話はできなかった。
聞けない。


そして、私のルーツ探しは、あっけなく終了した。

四国なんだって、と、私は、叔母と叔父に言った。
2人はあらまあと大笑いをした。

そして、まあ、しんどくなったら、ここへ帰ってきんしゃい、と言った。

うん、まあ、面白かった、ありがとね、と私は言った。