占い師のおばちゃんが言ったこと

30代前半のある一時期、私はやたらめったら占いに通った。
それは、臨床心理士になるのを諦めたあとだった。
似たようなものに、占い師があると私は気がつき、家族に言った。
「占い師になろうかと思うんだけど」

臨床心理士は向いてなかろう、いつ、あの子はそれに気づくのか?と裏でヒソヒソ笑っていた家族は、占い師については、全員「あら、いいじゃない」と言った。

理由は、占い師は話せるだろうから、というものだった。
どれだけおしゃべりだと思われているのか・・・。
確かに、私は、話すのが好きだ。
話を聞くのは下手くそではないが、多分、上手だけれど、どっちが好きかと言われれば。

ちなみに、クリーンランゲージを開発したデイビッド・グローヴは、パートナーのカイさんがワークショップでこそっと言っていたけれど、クライアントの話を聞くのがあまり好きではなかったそうだ。
退屈だ、と言っていたらしい。
それも、クリーンランゲージが生まれた理由の一つらしい。
確かに、クリーンランゲージを使って話を聞くとき、退屈とは無縁である。
人の話が本当に面白く感じる。
仕事で人の話を聞かざるを得ない人には、まじおすすめ、と私は思う。
技法自体もそうだけど、そのスタンスが素晴らしい。
本当に話を聞くのが楽になる。
私は、クリーンランゲージを使うのであれば、一日10人でもセッションができる、と思った。


さて、話は戻って、そういうわけでやたらめったら占いに通っていた私は、度々、占い師から胡散臭がられた。
「あなた、占いいらないでしょ?」というのがその主たる理由である。

「なんで来たの?」
「あなたの手相は使えませんよ」
「自分でわかるでしょ」

そのような言葉をよく言われた。

私が占いに通っていた理由は、オープニングとクロージングを知りたかったからだ。
どうやって話を始め、どうやって話を終えているか。
私は営業をしていたので、オープニングとクロージングの重要性は理解していたから。

まあ、ともかく、山のような占い通いの間、面白いのは、同じことを何度も言われたことだった。
胡散臭がられても、お金は払っているので、ちゃんとみてはくれる。

好きにやるしかないわね、あなたのような人は。

何度も何ども言われた。
手相を見る人は、ほぼ100%そう言った。

なんでも、私の手は一度死んだ人の手をしていて、手相は一回分の人生しか載っていないので、一度死んだ人は自分の好きにやるしかないということだった。
どうやら、私の人生の1回目は、25歳の冬に終わってしまったようだった。

で、「好きにやるしかない」の「好き」の中身を本当に理解し始めたのは、最近のような気がしている。

全部、もともと側にあったものばかりだけれども、好きと認識してるかどうかというと話はまた別である。

好きはなかなか奥深い。


そして、私は、私は人の話を聞くのも好きだ、と気がついたのだった(笑)
どういう種類の話?というのは関係するけれど。