マンゴーのあった日常

母の日、実家の母にマンゴーを贈った。
1つ2000円のマンゴーを2つ。

それを食べた母から、メキシコのマンゴーを思い出したとメールが来た。

私の口の中に味が広がった。
・・・・あれは美味しかった。
10歳以降、私はあれより美味しいマンゴーを食べていない。
青臭さが全くない、ただ甘いだけのフルーツ。

2000円出せば食べられることはわかった。


そして、私はまた、甘いマンゴーが激安フルーツだったその頃存在した自分の日常を思い出した。
つい先日、友人に言われた「あなたの日常、みんなの非日常。だいたい、あなたの周りでは、おかしなことばかり起こるじゃないの。あなたには普通でしょうけど、やっぱり非日常よ。だから面白いし笑えるのであって、それでいい」という言葉と一緒に。


1980年。メキシコ。

週末、近所の公園ではメルカドという市場が開かれていた。
たくさんのテントの店舗で、果物や野菜や衣服やお土産品が売られていた。
公園の舞台では、フラメンコダンスが披露されていた。
私はフラメンコを見るのが好きだった。
カスタネットの音も。ひらひらした裾のカラフルなスカートも。

公園には、ガム売りの子供たちがウロウロしていた。

晴れた日、母と妹と私は3人でメルカドに行った。
メルカドに行く時、母はいつも大きなカゴを持っていた。

時々は父もいたような気がする。
父はよく、メキシコ人に、メキシコ人と間違えられていた。
日に焼けて、口ひげをはやし、流暢にスペイン語を話していたからだろう。
彼はメキシコに行く前もスペインに何年かいて、あまり態度が日本人ぽい雰囲気でなかったのだろう。
すっかり馴染んでいた。

そこで、マンゴーやプラムを買ったり、露店で売っていた豚の皮を油であげてチリパウダーをかけたおやつを食べたりした。
私は豚肉を食べられなかったけれど、そのおやつは食べられた。
あのジャンクなおやつの名前は何というのだろう?
何が近いかな・・・カラムーチョから甘さを抜いた感じで歯ごたえは分厚いポテトチップスみたいな感じ。
お鍋のふたみたいに1枚が大きかった。
それを両手で持って、パリパリと食べた。

ちなみに、外での歩き食いは、メキシコにいた時はしてもよかった。
アイスクリーム、ハンバーガー、マンゴ、豚の皮のおやつ。
チュッパチャップス。

日本に帰って来たら、歩き食いは行儀が悪いと禁止された。
行儀とは居場所によって変わるものらしいな、と思った。

メルカドで買ったマンゴーは、そのうち、マンゴーババロアになることが多かった。







・・・・なんかあれだな。
この話、書いていて楽しいな。
この時期は、本当に楽しかったのだ、多分。
生きることが。

リソース中のリソースの記憶なのかもしれない。
ならば、誰に遠慮することもなく、思い出せるだけ思い出した方がいいかもしれない。