現れたメリー・ポピンズ

ここ一年半ほど、月一回、クリーンランゲージ&シンボリック・モデリングの勉強会を開いている。
たまたま集まった人たちが初心者だったので、最初から教えることになった。
私がアメリカやイギリスで聞いてきたこと、見てきたことをシェアする形で。

クリーンランゲージやシンボリック・モデリングは、「誰もが自由に使ってもいい」。
誰が教えてもいい。
それを使うのに資格はいらない。
ただ、レベルがある程度に達していると認めてもらうには、認定を受ける必要はある。

そして、それらは常にアップデートされているので、どこまで勉強するかは本人次第という感じ。

それで、つい最近のその勉強会の日、私は、自分が変わったことに気がついた。
話している時の体の感覚が変わっていたからわかりやすかった。


私がここ数年、自分がセッションを受ける側の時、そのお題に出し続けてきたのは、「教えること」についてだった。
私は、自分なりのモデルを構築する必要があった。

私が、数年前に、アメリカやイギリスにつめて行ったのは、トレーナーのあり方を見たかったというのもある。
どのようにワークショップを運営しているか、どのように集まる人々に接しているか、どのような表情で、どのような声で、どのように、、、。


その後もメールのやり取りを通して、私は教わった。
トレーナーの人々のあり方は一貫していた。

力になろう、手助けしよう、必要なものは全部持っていきなさい、という姿勢が徹底していた。

質問には全部、丁寧に答えてくれる。
英語のレベルは、私に合わせてくれたから、私は内容をちゃんと理解できた。
いつも期待を上回る返事が返ってくる。
しかも、差し出してくれるそれらは、無料だ。

出し惜しみが一切なかった。
ここまで一度もなかった。

すごいな、と私は思い続けた。


教える、つまり、自分が学んだことを分かち合うやり方を模索し始めたころ。

「あなたは誰のコピーにもならなくていい。あなたはあなたのやり方で、あなたが学んだことをシェアしなくては意味がない。」
「あなたはあなたの持っているリソースを使って教えればいい。」

そう、何度か言われた。


教えることを模索し始めた私のメタファーの世界に最初に登場したのは、美しい町に辿りつくために、その手前にある山を爆破する小さなピンク色の赤ちゃん革命家だった。

きゃきゃきゃと笑いながら、赤ちゃん革命家は爆弾を投げて、楽しそうに山を爆破し、そして、美しい町に、ブレーメンの音楽隊を引き連れていく。
私は、空の上から気球に乗って、ふわふわ飛んでその美しい町には行く。
地上ではいろいろ起きているが、私は空の上にいるからあまり関係ない。

そういう世界が現れた。


やがてその美しい町は、エメラルドシティというオズの魔法使いに登場する名前のある町になった。

それから、私は、現実に、あるエメラルドシティを見た。
ある2日間のワークショップに参加した時、ああ、これがエメラルドシティだと感じた。

そこには、いろんな国の人が、ただ魔法を学ぶために集まっていた。
楽しそうだったし、熱心だった。

その中で、私も楽しかったが、1日目の夕方に思った。

現実に、エメラルドシティを見てわかったのだ。
メタファーの世界は、現実に現実として現れることが度々あるが、その時、本人には、これがそうだとちゃんとわかる。


それで、私にはわかった。
これは、彼らが作ったエメラルドシティだ。
私は、私の、エメラルドシティを作らなくちゃいけない。


そうして2日目にしたワークで、自由の女神と関西空港というメタファーが登場した。

関西空港。
これもまたメタファーだが、そこは、エメラルドシティよりは、私の現実にうんと近い場所だ。

関西空港から始めよう、と私の口は言った。

そして、私にはわかった。
自分のエメラルドシティが、地球上のどこに存在しているのかが。

ちゃんと日本にある。
私のエメラルドシティは、外国ではなくて、日本にある。

私は飛び上がるくらい、嬉しかった。


そして、私は、小さな勉強会を始めた。

それから、まだ私は使えない魔法を使う魔法使いに来てもらい、友人たちに協力してもらって、ワークショップを開いた。
会場は、関西空港が見える場所だった。


そこで、私のメタファーの世界に、大きな癒しが起きて、新しいメタファーが生まれた。
キラキラ光る星に続く道の上に、私は立っていた。
「私は、日本語で語る」と、私は、英語で言った。
私の魔法の呪文は、日本語だ。


そして、次の日、現実の中で、やってきた魔法使いは、見ていてあげるからやってみなさい、と、私に最初の一歩を踏み出させた。


そして、それから、私は、長らく続いた英語力との戦いに勝利した。
私の英語は、話し聞く方は、ともかくクリーンランゲージでだけ使えればよかった。
それ以外では、私は英語を現実的には必要としていない。
読み書きは、辞書さえあればなんとでもなる。

もはや英語、、、とずっと思い続け、そして、最近、私はようやく自分の英語力との戦いに終わりを迎えた。



そして、つい最近、毎月の小さな勉強会で、私は自分が変わったことに気がついた。

うまくいえない。
でも、そこに、小さなエメラルドシティがあるのを、私は見た。
エメラルドシティの中に入れた、と、私は思った。




そして、ここからが、メタファーの世界がわけがわからず、そして、連鎖し続けるという特徴そのままなのだが。

エメラルドシティに入った私が、見つけた魔法使いは、メリー・ポピンズだった。

私のメタファーの世界にメリー・ポピンズが現れたのは、今回が初めてだ。

しかし、私にはわかった。

私が目指す魔法使いの姿は、誰なのかが。


エメラルドシティに入れたから、私が私に教えてきたのだ。
エメラルドシティに入るまでは、そこに入ることが先なので、その中の話は後である。

アウトカムは変わり続ける。
メタファーの世界は発展し続ける。

現実と絡み合いながら。


さて。

いまや私がなりたい魔法使いは、メリー・ポピンズだ。

ひとさじのお砂糖で人を幸せにしてしまう、ニコニコ笑いながら、子供ですら魔法が簡単に使えるようにしてしまう、陽気な魔法使い。


私がなりたい魔法使いは、人が簡単に魔法を使えるようにする魔法が使える魔法使い。
陽気に歌う魔法使い。


メリー・ポピンズ。

それは、小さなピンクの赤ちゃん革命家よりは、居心地のよいメタファーだ。
それに、メリー・ポピンズは、自由の女神よりは自由に動き回れる。
像は立っているだけだ。


メタファーの世界は試行錯誤して、本当に「望ましい」アウトカムになるまで、姿を変え続ける。



このメタファーはなかなかよいのではないだろうか、と、私は思った。
何しろ、私が人生最初に真似しようとした魔法使いは、メリー・ポピンズだ。
そして、今また現れた。

メリー・ポピンズの世界には争いはない。
風に乗ってフラッと現れ、後腐れなくフラッと消える。
それがメリー・ポピンズだ。


さて、週末は、また、別の勉強会だ。

果たして、メリー・ポピンズは現れるか?
そして、私は、ちゃんと、ひとさじのお砂糖を分かち合えるだろうか?


そのために、必要なリソースとサポートを当日までに探しておこう。