メタファーと現実

いつか、おじいちゃんのようになりたい。
おじいちゃんのように、ただ好きなように楽しそうに生きているだけなのに、人を幸せにできる人になりたい。
その人の周りにいる人が、勝手に幸せになるような人になりたい。


子供の頃から思っていた。
おじいちゃんはすごいなあ。
誰とでもすぐに仲良くなる。
優しくて、面白くて、いつもニコニコしていて、そして、ラーメンを作るのが上手い。



私が長らく抱いていた願いは、やがて、表現を変えた。


私は、人が幸せになるのを助ける言葉の魔法を使う魔法使いになりたい。


さっき、気がついたのだが、魔法使いになりたいといい始めてから、私は、おじいちゃんのようになりたいと思わなくなった。

そしてさっき、私の言う魔法使いの中には、祖父も含まれていると気がついた。
さらに、祖父だけではない、私の知るさまざまな魔法使いや、魔法使いのような人達が持つ要素も含まれていると気がついた。

シンデレラの中に出てくる魔法使いも含まれると気がついた。
ハリーポッターも含まれると気がついた。
メリー・ポピンズも。彼女は、ひとさじの砂糖で人を幸せにしてしまい、傘で空を飛ぶ。
私が人生最初に真似しようとした魔法使いは、メリー・ポピンズだ。
それは、何本かの傘の破壊を引き起こし、傘は空を飛ぶためのものではありません、と母に叱られた。

幼い頃から出会ってきた、実にたくさんの人を幸せにしようと手助けする魔法使いを総合したものが「魔法使い」だと気がついた。

魔法使いたちの仕事は早い。
彼らは呪文ひとつ、祈りひとつだ。


私は、できるだけ早い方法を取ろう、または模索しようとする傾向があるが、それは、おそらく、魔法使いたちの使う魔法の呪文が、一瞬で事を変えるからだろう、と気がついた。

クリーンランゲージ&シンボリックモデリングを使っている理由の一つも、人によるけれど、それは思考を変えるスピードが早いからだ。
なおかつ、現実に結びつく。


そして、ここが面白いのだが、私が早い方法と思い出してから、事は本当に早くなった。
意識は現実を変えるは、本当なのだろう。
そして、時間は相対的だというのも、そうなのだろう。



魔法使いというメタファーは、自然に生まれた。
私が、目の前で、魔法を使う人達を見続けた日々の中で。
何の質問をされたわけでもない。

私はただ思った。
魔法みたいだ!
魔法使いみたいだ!


なるほど。
メタファーとは、このように生まれるのか。

なるほど。
メタファーは、固有名詞や概念より多くの情報を含み、願いをより豊かにするとはこういうことか、と私は今更思った。


おじいちゃん、より、魔法使い、はより多くの情報を含む。
おじいちゃん、は、長所ばかりだったわけではない。

おじいちゃんの家族達、祖母、父兄妹は大変だったらしい。

父はよく言っていた。
「おまえは、おじいちゃんがおじいちゃんだったからいい。
他の人も、外面と付き合うだけだからいい。
お父さんには、おじいちゃんは父親だった。
父親としてのおじいちゃんは、最悪だ。」

祖母については、母から聞いた。
「おじいちゃんは気難しくて大変だったらしいわよ。」


魔法使いの家族は大変なものらしい。

だがしかし、私の、魔法使い、というメタファーにはそれらは含まれていない。
いいことだけが満載だ。


つまり、魔法使いはアウトカムだ。


となって、ふと、私は思った。
家の中での私は、外にいる私とは違う。

ポンコツな感じが満載で、賑やかしとペットの世話以外、ほとんど役には立っていない。
その賑やかしすら、機嫌が悪ければ放棄する。
時々誰とも喋りたくなくなり、黙り込んで、2.3日、口をきかなかったりする。

私の外面は、自分で見ていないからわからないけれど、おそらく、いい。
外で、私のこのような面は一切でない。
あ、、、ポンコツ感はたまにあるかもしれない。笑


夫は、君のような人についていけるのは僕くらいだ、君との暮らしは、社会貢献だと時々言う。

この人の受容力と寛容さは深い。
私の仕事には非常に協力的だ。
だが、私が、人を助けるのをさぼろうとするならば、非常に怒る。
働け、という。


外での私は時々、すごいですね、とか言われるが、私は自身をすごいと思ったことは一度もない。
謙遜でも、謙虚でもない。 
事実としてそうであり、それが私だ。

ポンコツな面がひどいからだ。
そして、裏で、それを支えてくれている多くの人がいる。

私が夫といるのは、夫が、ポンコツな私を受け容れてくれているからだ。


今朝。

私は、魔法使いになりたい。
しかしながら、魔法使いはまた、ただの人である、と私はふと思った。


魔法使いは、ひとりで、魔法使いでいられるわけではない。

支えてくれる人達も幸せにできてこそ、魔法使いだ、と、私は魔法使いのデータをアップデートした。


今日、夫が帰ってきたら、お礼を言おう。
いつもありがとう。
あなたは素晴らしい、と、ついでに絶賛しておこう。


は?何か悪いものでも食べたのか?と言われるかもしれない。

しかし、私が、祖父よりアップデートされた魔法使いになるためには、それは必要なことだ、と私は感じた。


感謝をきちんと表現できること。

感謝はまた、幸せを助ける魔法のひとつだ。
表現してこそ働く魔法だ。


そして、メタファーを生かすも殺すも、育てるも、つまりは、行動次第だ。
メタファーは行動をサポートするが、同時にまた、行動もメタファーに影響する。

メタファーは体験と記憶から生まれる。
つまり、メタファーは、現実と相互作用する。

なるほどね、と思った。

魔法使いというメタファーを、育てよう。