ガーンジ島の読書会が生んだ午後

 

最近、Amazonプライムで、ガーンジ島の読書会という映画を見た。

それで、私も読書会に参加したくなった。


今朝、読書会で検索をかけたら、家から30分くらいの場所にあるカルチャーセンターで、今日から始まる読書会の講座を見つけた。

講師の先生の名前を見たら、なんだかんだ2年くらい行けていないが、私の英会話の先生の名前だった。


あら!と思った。

まだ予約受付中だったので、私はすぐに予約して、用意する本をKINDLEで購入した。


オーソン・ウェルズのThe Short Story of the World History.

そして、パソコンを持って、出かけた。


会場は、フェスティバルホールというコンサート会場と同じビルの中にあったので、場所はすぐわかったが、私は、ビルの中に入ってから迷った。

茶色と植物の緑でいっぱいで、気持ちいい空間の中をうろうろさまよい、ガードマンの人に尋ねて、会場にたどりついた。


久しぶりに会った相変わらず目がくりくりした先生は、髪がきれいなシルバー色のショートヘアになっていた。

先生は、私を見て驚いて、あら!と言った。

それから、私の髪の色について、先生は触れた。


現在、私の髪の毛は赤い。


なんでも、その講座は以前、ある大学教授がやっていたものを引き継いだということで、読書会というより、大学の授業みたいなスタイルだった。


話はすでに16章まで進んでいて、今日は、メソポタミア文明から紀元前3000年の古代エジプトのあたりだった。

古代エジプトに、一神教が生まれた時期があった話。

アクエンアテンという、ツタンカーメンのお父さんの時代。


なんでも、ギリシャのプラトンも、一神教に興味を抱いていたという話もあるらしい。

一神教のはじまりといえば、ユダヤの独占みたいな感じもあるが、どうも、同じ頃、同じようなことを感じ、興味を抱いた人たちはいろいろいたような気配もあるらしい。


時代がそこにあったらしい。

時代といっても、歴史の中では千年単位だけれど。



私は、なんだか、大学時代にタイムスリップしたみたいな気分になりながら、授業を聞いていた。

大学時代にあった民俗学の授業を思い出したのだ。

アーミーシャツにヘビ柄のベルトをしめた男の先生がしていた授業。


どんな授業でも一番前に座って、熱心に質問していた、選択授業で一緒になった背の低いかわいらしい、TOEICは満点しか取ったことがないという隣のクラスの女の子のことも。


私の隣に座っていたシニア女性が、ちょうど彼女と同じような雰囲気で、よく質問していたからだ。


大学時代との違いは、大学時代、私はいつも、すぐに教室から出ていける一番後ろの方に、友達と固まって座っていて、おしゃべりしたり、授業が終わったらどこに行くか考えていたのと違い、今日は、一番前に座って、一生懸命、話を聞いて、ノートも取っていたことだった。



ところで、私は最近、家で、空いている時間のほとんど全ての時間、ある本を読んで、日本語にしている。

つまり、翻訳している。

英語でならわかるような気がするその本の内容は、うまく日本語にならず、私は、あ〜!となんども叫ぶ。


私の知り合いのあるアメリカ人は、その本は、英語でも難しいと言った。

その人は、その本を4回書き写して、それでようやく理解したと言っていた。


私は、2文訳すのに、2時間かかったりしている。

次の日見直して、さらに手を入れたりする。

自分の日本語力と戦っているような気もする。


こんなに丁寧に文章と向き合っているのは生まれてはじめての気がする。


ほとんど無謀に近い気分すらするが、なぜ諦めないか、自分でも不思議だ。

ワクワクする。

パズルを解いている気分。


おそらくは、そこには、私の「緑の葉っぱ」という内的なメタファーが関係している。



私は、ああ、大学時代の私を、机に縛りつけてやりたいと思ったりする。

彼女がもう少し勉強してくれていたら、私は、もう少し、楽だったはずだ。



今日、その久々の授業を聞いているうちに、私は、やや自信を取り戻した。

オーソン・ウェルズの本は、なんぼか簡単に読めたからだ。

もう一つあった参考図書のプリントは、さらに読みやすかった。


来てよかったと、私は思った。


内容も面白かった。

私は、世界史は好きだ。



授業が終わった後、私は、先生に話しかけにいった。

そして、9月になったら、今している作業を助けて欲しいとお願いした。


いいですよ、と、先生は言った。



帰り、私は、ビルの地下にあった空いていたパブのテラスで、フィッシュ・アンド・チップスを食べ、マンゴージュースを飲んだ。


テラスは吹き抜けで気分がよかった。


周りのお店はまだほとんど閉まっていて、人もあまりおらず、ガランとしていた。


たまたま、先生が前を通りかかり、「隣のスーパーは面白いものがありますよ」と教えてくれた。

それで私は、食べた後、そこを覗いた。


そこは、輸入食品メインのお店だった。


私は、子供の頃好きだったフリトレーのチートス、イギリスの紅茶お得用100パック入りと、100円のイタリアの生パスタと、フランスのレモンタルトを買った。


そして、スーパーの袋をぶらさげながら、ビルの前に出て、しばらく川べりの遊歩道をてくてく歩いた。



一本の映画から生まれた午後は、こんな感じで過ぎていった。