メタファーとクライアントと私のエンカウンター・グループ

どこかに書いたことがありますし、私が自分のことを英語で自己紹介するとき必ずする話があります。


それは私の最初の心理カウンセリングの先生のM先生の話です。

彼は40年、精神科医をした後、臨床心理士として、児童心理学に携わることをサポートされていました。


私は、私が住んでいた自治体が協賛していた心理カウンセリング講座で、彼と出会いました。

その自治体は、とある事件をきっかけに、全国のどこよりも早く、スクールカウンセラーの導入を決めた自治体でした。


25才の私は、その年の講座の開講を市報で知りました。

行ってみると、受講生は9割、スクールカウンセラー資格をとりたい学校の先生たちでした。

私の住んでいた自治体では、そこで行われる授業を、大学の授業と同等に単位認定していたからです。

私は単位を取り続けましたが、私がそこでは取れない時間がありました。実務実習です。



その後、私は、臨床心理士になるために大学院に行く準備をしている途中で、M先生にも向いていないと反対されました。

家族にも、向いていないといつ気づくかと思っていたと笑われました。


M先生は、私に、「人の心の闇に向き合うのではなく、人の心から夢や希望を引き出す仕事の方が君には向いているのではないかと思います。どちらも同じ仕事だよ。君には明るい場所が似合う。君は、明るい場所にいなさい」と私に言いました。


当時、日本にはまだ、コーチングの概念はありませんでした。

心理学といえば、何か問題を扱うもの、でした。


私は彼から多くを学びました。


そうして、やがて、彼は亡くなりました。

「探してごらん。必ずあるはずだ」と言うのが、彼が私にくれた宿題のひとつでした。


クリーンランゲージに出会ったその日、私は泣きました。

理由のひとつは、「ああ、ようやく見つかった」と思ったからです。


私にとっては、クリーンランゲージもシンボリック・モデリングも、むちゃくちゃ新しい物ではありませんでした。


私がよく知ることを、果てしなくスマートに実践する方法が現れたと、私は思いました。

M先生のスタンスは、クリーンランゲージのスタンスと非常ににていました。

ただ、彼の質問には定型はなかったし、どのタイミングで、どんな質問をしてくるかは、当時の私には読み取れませんでした。


ただ、M先生がしていたことと同じだ!ものすごく似ている!なおかつ、アウトカム、つまり、夢や希望を引っ張りだす技法だ!と、見つけた!と、私は泣いたのです。


10年以上、探し続けたものに出会えたから。

ジェームズにはじめて会ったその日、私の胸には温もりが戻りました。

ようやく、新しい自分の先生に出会えた気分がしました。


ただ当時すでに、ペニーとジェームズは、初心者対象には教えるのをやめていました。

それで私はマリアンのところに行きました。


私は彼らには、自分がシンボリック・モデリングを好きな理由を話しています。

クリーンだからじゃない、望むアウトカムの存在がその理由だと。

望むアウトカムを達成するためには、クリーンでいる必要がある。

だから、クリーンでいるし、クリーンランゲージを使う。

目的は、望むアウトカムだ。

なぜならば、私にとって、それは愛や夢や希望を意味するから。

人はたとえ、絶望感の中にいても、どんな時でも、希望があれば生きていける。


そう私はまくしたてました。

わかった、わかったとジェームズは笑い、ペニーは静かに私を見つめていました。


よく読めば、シンボリック・モデリングにおけるクリーンランゲージの役割を、私はそのまま語ったのですが、私は教科書を真面目に読むタイプではありません。

しかも全部英語でした。

当時の私は、何を読んでもわからなかったのが事実です。

だから、私は自分がクライアントでいることを選びました。それなら、質問と質問の働きを体で覚えられるから。


人にシェアするつもりになったとき、私は初めて、テキストや文章を読むことになりました。



後に、デイビッド・グローブが、ロジャースに影響を受けていたことを知りました。

彼は NLPも使っていました。

つまり、エリクソンの影響も大きい。


シンボリック・モデリングを開発したペニーとジェームズはもともとNLPのトレーナーです。

シンボリック・モデリングには、システム理論やカオス理論、認知心理学などからも発想が組み込まれています。


メタファーを使うのは、根っこに、「同型」の発想があるからです。



私は、クリーンランゲージを使って、シンボリック・モデリングをファシリテーションするとき、メタファーとクライアント、私とで、エンカウンター・グループをしている気分によくなります。


エンカウンターは、ロジャースがしていたことです。


メタファーとクライアント、ファシリテーターの会話を、デイビッドは、トライアログ(三者対話)と呼びました。

デイビッドのメタファーです。



私はクリーンランゲージに既視感を覚えました。

同時に、こんなにスマートな質問法があるなんて!と感動しました。



私がシンボリック・モデリングを高く評価している理由のひとつは、それが、日常の多くの場面でも使えるような設計にデザインされていることです。

カウンセリングルームやコーチング、診療室以外でも、誰かが、人の精神面をサポートするときに使用しやすいようにもできています。


もちろん、プロの心理家やコーチ、セラピストも使います。

この場合、習得には少し長い時間がかかります。他の技法と一緒です。

奥は果てしなく深いです。

それも、他の技法と一緒です。



M先生、きっと、クリーンランゲージやシンボリック・モデリングを知りたかったやろうなあと、私は今でもたまに思います。


私が登場を待っているのは、未来のM先生です。

とんでもなく頭がよい、心理学について、体系だてられた知識が頭に入っている人。



民間の日常については、私や未来に登場する他のトレーナーでできます。

しかし、私には手が届かない場所があります。


学校や子供たちがいる場所です。


子供には、シンボリック・モデリングはむちゃくちゃいい技法だと思います。

創造性や好奇心、ユーモアなどを刺激します。

途中までシンボリック・モデリングでして、そのあと認知行動療法などに切り替えることも可能です。


だから、大人のリワークプログラムなどにもあっているかと思います。

その人のペースで新しい日常を生み出すサポートができます。

これもまた、私の手の届かない場所。

セッションで似たようなことはたまにはやりますが。

途中までシンボリック・モデリングでやって、後半は別のことをしています。

社会復帰でつまずく人は、割といるので。




そんなこんなが、今日も私を動かしています。


私がシンボリック・モデリングを最後にシェアする人は、M先生。

先生、知ってる?と、いつか、M先生にシェアすることが、私のアフター・ライフの予定のひとつです(笑)

先生は賢い。

きっと質問の嵐。

だから、私は、この先も、学んで学んで学び続けます。




そしていつか、副産物として、日本語話者が誰でも使いやすいように、日本語のために作られたモデルを構築したいです。

英語と日本語は発想の根本が違うから。

けれど、これはまた別のはなし。

まだまだ時間がかかります。