「ここから、あそこまで」: 次にする質問はな〜んだ?
すごく小さなマニアックな話ですが、日本語で、クリーンランゲージで話を聞く時、「そこにその動作が暗示されている」と、ファシリテーター側が気づく必要がある言葉がいくつかあります。
私が気づいたのが、去年の年末なので、全てをまとめるには、まだ時間がかかります。
というわけで、シェア。
例えば、場所を問いかけたとき。
「そして、そのXはどこ(にありますか)?」
または
「そして、そのXはどのあたり(にありますか)?」
よくある返ってくるクライアントの答えは、何パターンかあります。
「ここです」とある場所を言う。
「このあたりかな」とだいたいの場所(範囲)を言う。
「ここから、あそこまで」とある範囲を言う。
「わからない」と言う。
「どこにもない」と言う。
「Xは黄色なんです」、「Xは退屈してるのがわかるんです」など、Xの新しい情報を言う。
今日、取り上げるのは、「ここから、あそこまで」です。
これが、いかに、「このあたりかな」とは違うかです。
どちらも、空間的にある一定の範囲を示しています。
クライアントが、Xがある場所、その範囲をくるっとまとめて「このあたり」と言う時と、「ここから、あそこまで」の違いはいくつかありますが、今日、書きたいのは、「そこに、なんらかの動きが推測されるかどうか」です。
わかりやすいので、一度、自分の指を使って、「このあたり」と「ここから、あそこまで」を表現してみてください。
「このあたり」にはなくて、「ここから、あそこまで」には含まれている要素は、範囲の「はじまり」と「終わり」です。
そして、「はじまり」と「終わり」の間には、「何か動きがある可能性が高い」ということです。
つまり、クライアントが、口にはしていない「動詞」がそこにある可能性がある、ということです。
例えば、「ここから、あそこまで」にかけて広がっている、「ここから、あそこまで」流れている、「ここから、あそこまで」に渡って、ある。そんな感じです。
広がる、流れる、渡る、この3つだけでも、「ここから、あそこまで」には、Xには、違う種類の出来事が存在するはずです。
けれど、日本語話者のクライアントが、場所を問いかけられて、それを口にすることは稀です。
動きを省略して話す人は、割と多いです。
日常でもこんな感じのやりとりはあるかもしれません。
「これ、どうすればいいの?」と何をすればいいのか動作を問いかけたら、「納得できればそれでいいよ」と、これ、についてではなく、相手の気持ちについて答えがかえってくること。
動作の後の影響や効果を答えています。
動作そのものについては、回答には含まれていません。
シンボリック・モデリングのこの場合、動き、つまり、動詞は、関係性を表している可能性があります。
それから、出来事がある可能性もあります。
つまりは、動きがある可能性。
メタファー・ランドスケープの中の広がりを構築していく要素の一つは、関係性です。そして、動き、です。
この動きを、プロセス、といいます。
全ての動作には、動作の始まりと終わりがあります。
全ての出来事には、始まりと終わりがあります。
始まりから終わりまでの流れ、出来事、関係性、順番、動作、そういったものがプロセス(過程)に含まれる要素です。
そして、何より、忘れないようにする必要があるのは、その会話のはじまりの始まりは、「あなたは何が起きればいいのでしょう?」だったということなのです。
「起きる」です。
まだ起きてはいない、起きてほしいこと。
その人が「起きたら好ましいね」と思っていること。
それをファシリテーターが問いかけることから、会話はスタートしたのです。
シンボリック・モデリングが目指すゴールはいつでも、「起きて欲しいこと」です。
そこまでのプロセス(過程)の旅、そこをファシリテーターはサポートしています。
(ちなみに、余談ですが、私が観察している限り、経験の浅い人が、セッション中に苦戦する時、理由の一つは、この「何から会話を始めたか」を忘れてしまうことにもあるように思います。)
それを、クライアントはどこで暗示しているか、それが、日本語の場合は、隠れていることがあります。
起きて欲しいことが、「ここから、あそこまで」の間に隠れている可能性すらある、ということなのです。
また、もしも、Xが、「ここから、あそこまで」にあるのであれば、そのXは知覚者の可能性があります。
なぜかというと、Xは動く可能性があるからです。
それがX自身の意図で動くなら、そのXは知覚者です。
意図なく動くなら、動きだけでは、知覚者と特定はできません。他にも証拠は必要です。
さて、誰かが、「ここから、あそこまで」と答えたら、次にする質問はなんでしょう?
いろいろあります。
この答えは、頻繁に登場します。
ぜひ、考えてみてくださいね。
その時、ファシリテーターがしている作業によっても、「ここから、あそこまで」の次の質問は、おそらく変わります。
ただ、そこには、なんらかの動きが暗示されている可能性が非常に高いということについて、気づいたことのシェアでした。
昨年の秋のペニーとジェームズのオンラインワークショップに参加された方は、その中の最後のデモセッション記録を見ると、その中に三箇所、似たような場所があることに気づくかもしれません。
通訳の2人の「技ね!」としかいいようのない、素晴らしいコンビネーションが、そこにあります。
また、「ここから、あそこまで」についての理解を助けるものとしては、InsideCleanのシーズン4があります。
これは日本語資料は揃ってますので、英語なしでも理解できると思います。
「ここから、あそこまで」には、非常にたくさんの情報が詰まっている可能性があります。
さて、クライアントが「Xはここから、あそこまでにある」と言いました。
あなたが次に尋ねる質問は、な〜んだ?