「知覚者」についての翻訳練習シリーズ (2)

 「知覚者」についての翻訳練習シリーズ (2)

Metaphor in Mind(James Lawley &Penny Tompkins)より抜粋

*英語原文は、本を購入してご確認ください。


3.RELATIONSHIPS  P.32 より

Chapter2:Models We Create By)


シンボルには、見えたり、聴こえたり、感じたりといったような直接的な方法で知覚できる「形」や「場所(位置)」があります。


関係性はそうではありません。

2つのシンボルが互いにつながったり、協力したり、バランスをとったり、戦ったり、お互いを避けあったりする時、その2つのシンボルは、論理的、機能的な関係性の一部です。


関係性とは、2つのシンボル(または、2つの時空にまたがる1つのシンボル)の「間(between)」にあったり、「交差(across)」したり、(2つを)「覆っていたり(over)」する相互作用、つながり、相関関係のことです。

少なくとも、シンボルひとつひとつと、そのシンボルの知覚者には、常に関係性があります。


上述の例の中では、「自分」という知覚者は、城門を「開けよう」としています。


「開けよう」は、2つのシンボルの関係性を明示し、関連性が推測される多くの情報を提供してくれています。


つまり、

その門は閉ざされている

「自分」は何度か(その門)を開けようとしてみた

「自分」はまだ開けようと試みている

「自分」はドアが開くことを望んでいる、けれども、その時「自分」はドアを開ける事ができない。


こういった情報です。



___________________________


4:Chapter3  Less is More: Basic Clean Language 
The Function of the Basic Clean Questions
Developing questions

 

IDENTIFYING ATTRIBUTES OF FORM 形の属性/特徴を識別する (P.66)

より


シンボルは、その属性、質、特徴、特性、機能によって識別され、区別されます。


クライアントがシンボルのある特定の属性/特徴を識別すると、そのシンボルは、抽象概念ではない実体になります。


「概念には形がない」のに対して、「シンボルは他のシンボルとの相互作用や機能があるだけではなく、歴史や運命までも持っている」のです。


一般的な「門」が持つ概念と、「分厚くて、すごく古くて、飾りがついていて、とても重たい城門」との違いはお分かりになるでしょうか。そういった属性(特徴)が、この門独特の形をもたらしています。


次の2つのクリーンな質問は、クライアントにシンボルの属性/特徴や機能、そのほかのシンボルとの関係性に関わる情報を見つけ出すように誘います。



そして、{その/それらの}[クライアントの言葉]について、他に(は)何かありますか?


そして、その[クライアントの言葉]は、どんな/どのような/どんな種類の[クライアントの言葉]ですか?



最初の質問の中で、際立つ言葉(the salient word)は、「他に(は)」です。これは以下の言葉全てのどの意味にも取ることができます。


付け加えて、それ以外に、それ以上に、それとは違う、補足として、もっと/さらに、それに加えて、それより重要な



「そして、そのXについて、他に(は)何かありますか?」と問いかけ、「X」をどう表現するか考えるよう、クライアントを誘います。クライアントがそこまでに描写していない特徴に気づくように誘うのです。


「そのXについて」という言葉は、クライアントが、その他の「X」とそのX」を区別して、ある特定の「X」に集中するように促しています。


クリーンランゲージの完全構文(フル・シンタックス)では、「時(に)」という言葉で、特定の内容(時間と空間)に注意を向けます。

また、「~について」と「その」という言葉で、特定の文脈(形と場所)に注意を向けます。


これらの言葉は、一度に特定のひとつの知覚的な側面に注意を向けることで、累積的に作用します。

(知覚的な側面…シンボルひとつ、シンボル同士のある関係性、メタファーひとつ、知覚のパターン、メタファー・ランドスケープ全体など)


「その」は、多くのクライアントに、シンボルに独立性やアイデンティティを持たせることを促進します。そして、知覚者と知覚対象(知覚者が知覚するもの)を分離した存在にします。


「そして 他に(は)何かありますか?」という質問には、ほとんど前提がありません。

そのため、いつでも、便利に問いかけることができます。


私たちは、この質問のことを「セラピストの友」と呼んでいます。それは、もし次にどの質問をすればいいかがわからなくなってしまった時には、この質問を問いかければいいからなのです。


ある練習生が、トレーニングでのエクササイズ中の20分間、この質問だけを問いかけ続けたことがあります。


「そして、他に(は)何かありますか?」
練習相手のとあるメタファーについて、そう問いかけ続けたのです。


そのセッションの受け手は、何度か、明らかに感情的な体験をすることになりました。

そこには、激しい苛立ちがあり、その人の忍耐についての洞察は絶頂に達しました。


振り返りの時間が訪れた時、セッションの受け手は、自分の練習相手に感謝していました。そして、信じられないといった様子で、その人に問いかけました。


「なぜ、私に、その質問ひとつだけを問いかければ、それで完璧だってわかったの?」
彼は、恥ずかしそうにこう言いました。
「わからなかったからだよ。他の質問が全く思い出せなかっただけなんだ。」



クリーンランゲージと呼ばれる質問ファミリー内で、「そして、そのXについて 他に(は)何かありますか?」には、「そして、そのXは どんな/どのような/どんな種類のXですか?」(*)という兄弟がいます。


*What kind of X is that X?


この質問のキーワードは、「kind」です。

これは古期英語の「nature(自然(の条理)/本質/性質)」に由来します。

それゆえに、この質問が問いかけているのは、「そのXの本質/性質はなんですか?」ということになります。


この質問に対するクライアントの典型的な反応は3種類です。

クライアントが…

X」の作用/働き/機能の質を描写する。

X」の例や実例を提示する。

X」に類似した描写をする。


クライアントの応答がなんにせよ、クライアントは、「X」についてさらに何かを発見する可能性が高いでしょう。


この後の逐語録の抜粋は、この2つの「特徴/属性を識別する(明らかにする)質問」に対してのクライアントの典型的な応答を示したものです。



C2:  まるで、自分が城門の後ろにいるみたいなんです。


T2: そして、まるで、あなたは城門の後ろにいるみたい。そして、城門の後ろのとき、その城門はどんな城門ですか?


C3: 大きな城門で、とても分厚くて、とても古くて、飾りがついていて、とても重い。


T3: そして、とても分厚い大きな城門、とても古くて、飾りがついている。とても重い。そして、大きな城門がとても分厚くて、とても古くて、飾りがついていて、とても重いとき、その大きな城門について 他に(は)何かありますか?


C4: (私は)それを開けません。それに、(私は)それを開こうとしていて、それで、すごくすごく疲れています。


T4: そして、あなたはそれを開けない。そして、あなたは、それを開こうしていて すごくすごく疲れている。そして、あなたがそれを開こうとしていて すごくすごく疲れているとすると、それは どんな すごくすごく疲れている なんでしょう?

 

C5:  一人でもがいているような感じで、どこにも行けないみたいな。エネルギーがたくさん必要なんです。自分で自分の頭を壁に打ち付けているような感じです。




C3で、クライアントは、「大きい、とても分厚い、とても古い、飾りがある、とても重い」という一連の属性/特徴を備えた「城門」を、「自分」が知覚/認識していることを明示しています。


C4で、クライアントは城門とその後ろにあるシンボルの知覚者との間の関係性を「開こうとしている」と描写しています…そして、その門の現状の機能として、門は開かないことを示唆しています。


C5では、クライアントは、属性/特徴の描写から、「すごくすごく疲れている」の性質を説明することへと、切り替わっています。

そこでは多くのメタファーが使用されています。

「もがいている」

「どこにも行けない」

「エネルギーがたくさん必要」

「自分で自分の頭を壁に打ち付けている」


クライアントは、この時、詳細な文脈、意図、その意図が達成されないことによる影響を、「3回、簡単な質問をされただけで」確認することができたのです。



「他に何か?」そして、「どんな/どのような?」という質問は、クライアントの注意を、一度に、その人の知覚のある側面に向けます。

すると、それらの質問は、その側面の属性/特徴を明らかにするよう、クライアントを誘います。


この2つの質問は、シンボリック・モデリングのプロセスのどのタイミングでも問いかけられるという、非常に便利な役割を果たしています。


(3)はこちら