「あなたは」の話
*引き続き、マニアックすぎる話。仕事以外はずうっとやっとんな、もう立派なオタクだなと、自分に思う、今日この頃。*
私がクリーンランゲージで使うクリーンな質問で、一番最初に取り組んだ質問は、「あなたは何が起きればいいのでしょう?」だ。
もう数年前。
数年経って、今、どうやっているかを、少し書いてみようと思う。
.......
クリーンランゲージは、情報中心の話の聞き方。
その話をしているその人自身に焦点を合わせるのではなく、その話そのもの、話の内容に焦点を当てる。
(実際には、その人自身のことも、むちゃくちゃ観察はしている。表に出ている態度、呼吸、目線、体の動き、指先の動きなど、全部観察している。それも、情報、だ。)
これは、質問を見ても、よくわかる気がする。
質問の中にyouという本人を指す単語が入るのは、定型のメジャーな質問としては、一問だけだ。(他にもあるにはあるが、あんまり使わない。)
youが入るメインどころのたった一問。
What would you like to have happen?
「あなたは、何が、起きれば好いのでしょう?」
その人の望みを尋ねる時にだけ、その人本人に焦点をあてている。
(どうやって知ってるの?または、どうやってわかるの?と、本人の知恵を確認する質問もあるにはある。たまあに、使う。)
これは、
「あなた[には]、何が起きればいいのでしょう?」とは尋ねてない。
あなたは〜と尋ねる時、何かが起きるその対象を、あなた、と限定はしていない。
あなたには〜と尋ねると、あなたに何かが起きるという前提がそこに入るということらしい。
日本語だと、「に」たった一文字のことだけれど、大きな違いがそこにある。
クリーンランゲージには、変化をこちらから促すことはしないというルールがある。
その人が変化したい時に、その人は変化すればいい、という。
あなたには、と尋ねてしまうと、そこから逸脱する。
英語だと、これをやろうとするなら、to youと付け加えないと、この働きは起きない。
日本語は、たった一文字、「に」、を付け加えてしまえば、それが起きる。
つい、うっかりやってしまいそうだ。
小さな小さな一文字で、文章の意図するところが変わってしまうなんて、なんとも繊細な言語だなあと、私は、to youの使い方について書いてあるところを読んだ時に、日本語について、改めて意識しなおした。
ちなみに、この、「あなたは」という主語は、日本語だと、状況によっては邪魔に感じることがあり、私は、以下の場合は、「あなたは」は、省略して使っている。
セッションのはじまりに、
「このセッションを受けることで、何が起きればいいですか?」
仕事の依頼を受けたときに
「私にご依頼いただくことで、何が起きればいいですか?」
何かの条件がある時に
「〜ことで、何が起きればいいですか?」
日常使いやビジネス使いの時は、割と、「あなたは」は省略している。
日常、あなたは、とは尋ねないからだ。
そして、目の前の相手その人が、何かを望んでそこにいることが、この場合は明白だからだ。
明らかなこと、見たらわかることを、日本語は語らない。
この辺、英語とちょっと感覚が違う。
または、セッションの文脈で、そこまでずっと主語を「私」で話していたクライアントに、シンボリック・モデリングを使う時も、話の流れによっては、私は、「あなたは」はひとまず、一回目にこの質問をするときは、省略している。
「〇〇さん、そして/それで、何が起きればいいのでしょう?」
一番最初だけ、「あなたは」の代わりに、質問の前に名前を呼んで、それから質問するというやり方をする。
その人自身で、自分に焦点が合わせられるとその前の会話で判断できた時はそうしている。
(名前を呼ぶのは、ラポールを作りたいという意図もある。この後は、セッションの最後まで、名前は呼ばない。最後に名前を呼ぶのは、現実に引っ張り戻すため。)
この場合、質問における主語の役割は、対象に注意を向けることだ。
何について考えるか、その対象が、主語。
クリーンランゲージ&シンボリック・モデリングのファシリテーターがやっている大きな仕事のひとつは、これについて考えてみて?と、クライアントの注意をそちらに向けること。
クライアントが「それについては考えたくない」と言うのは、もちろんありだ。
「(私が)起きて欲しいことは、なんにもない」と答えてもいい。
なんでもいい。
いくらでも、話を続けることはできる。
「なんにもない」について、質問すればいいだけだ。
主語をはっきり言わないクライアント、自分自身に焦点を合わせるのが苦手なクライアントには、最初から、
「それで/そして、あなたは、何が起きればいいのでしょう?」と言う。
焦点を当てるのを手伝うために。
ものすごく柔らかい優しいトーンで、あなたは、と区切って、言う。
なぜかというと、経験的に「何が起きればいいのでしょう?」と主語を省略して尋ねても、そういう人の話はその人の外側でくるくる回るばかりだからだ。
ともかく、声のトーンひとつで起きることが変わるから、声のトーンは要注意である。
クリーンランゲージは、こちらから話せる単語が少なく、クライアントのトーン、自分のトーンの2トーンの使い分けも必要だから、セッションの文脈で使う時は、もう、声の魔術師を目指すしかないようなとこもある。
さて話は、「あなた」に戻りまして、実際の人との会話、セッションが、いきなり質問から始まることは、私の場合、まあ、ほとんどないに等しい。
初めて会う人の場合は特にそう。
「こんにちは、そして、あなたは〜?」とは、まずならない。
変だもの。
だから、状況によって、「あなた」の扱いには工夫がいると、私は感じている。
これもまた、クリーンランゲージを日本語で使う時に必要な工夫かもしれない。
そして、また、私の頭には、ん〜、じゃあさ、これを初心者さんにはどう伝えるの?という自分向けの質問が浮かんだのだった。
そうねえ。。。どうするかねえ。。。