価値の値段

 こんこんと相方さんに諭された。

同じことは、過去に何度か言われたことがある。

母に至っては、なんてバカなのと怒っていた。


私の自分の仕事に対する金額の見積もりが低いということについてである。


なぜ、セッションは適正価格に値段をつけることに、ためらわないのに、デザインフィーをそんなに安く見積もるのかと、相方さんは呆れて言った。

そして、自分のデザインの価格がわかるまで、オリジナル商品だけを作っておいてくれと言った。

安売りは困る、と。


商品を作っていいのは、私は、商品価格は付けられるからである。

多分、妥当な価格。

ルール通りにつけている。

そこにデザインフィーは乗せていない。


なぜに、商品やセッションの価格は妥当に付けられて、同じく売り物であるデザインの価格については妥当ではないか。


理由は、私自身の中では明らかだ。

わからないからだ。笑



商品価格の付け方は、会社で覚えた。

セッションの価格は、クライアントさんが教えてくれた。

数年前、セッション代が安いとクライアントさん達が、チップをつけてセッション代を払い始めたので、気を使ってもらうのが申し訳なくなって、私はセッション代を値上げしたのである。

私自身は、セッションは、私を必要とする人がいる限り続けるが、そこで大儲けする気は今もない。



そしてデザインは、何度も書くが、そもそも会社員時代に社長が予算をくれないという理由でやり始めたことだ。

デザインができることは、私のお給料とは関係しなかった。

評価とも関係しなかった。

それは売り上げを上げるための努力のひとつに過ぎなかった。


ほぼ我流。

だから、パソコンを使ってデザインする人が、デザイン学校で最初に習うだろう操作も最近までできなかった。


私の美術の成績は悪かった。

絵も上手くない。

本人的には、美術系は不得意の意識すらある。

色は好きだ。


私は、デザイン業界には繋がりを持たない。

サポートしてくれる元グラフィックデザイナーの友人はいるので、知識や技術が足りない部分でどうしても困ったら相談する。


そんな感じ。

やりたいことをどうやったらできるかを考えるながら10年やってきた。

形にするために、作業プロセスを調べて覚える感じ。

こういう感じにしたいんだけどから、話は始まる。


私の特技はいまや、紙や空間の真ん中の点を見つけられることと、サイズのミリがだいたいわかることだが、私が胸を張って自慢できるのはそれくらい。

これは数をこなせば誰でもできる。


しかしながら、なぜかは知らないが、デザインは、自分がしている仕事の中で一番評判がいい。

好きにやればやったほど評価がいい。


私のカード作りの相方さんは、もともと、美大を卒業してデザインに関わる仕事をしていた人で、相方さんは、ここまでデザインにNGを一度も出さなかった。



母は言った。

見落としてたわ。


母が私の色やデザインの感性を見落とした理由は、美術の成績が優れ、美大に行きたいと言っていた人がひとり、家の中にいたからだ。

妹だ。

母は私には音楽を、妹には美術をさせた。


どちらも、本人たちが、それが好きだったからだ。



果たして。

自身を振り返ると、この10年、一番謙虚に取り組んできた仕事はデザインだ。

自信がなかったからである。


手抜きのしようもなかった。

手抜きは、余裕がある人ができることだ。


私は、ただ自分に見えているものを、誰にも見えるようにするために必要なことを調べ倒し、人に聞き、ソフトで試しを一生懸命やるしかなかった。


そして、それらの作業は、遊びだった。

遊びにお金をもらえるくらいの感じ。


色使いと色の感性に対して、相方さんは褒めてくれる。

色使いにはルールがあるが、オリジナルを作る時は、ルールは無視して自分の目だけで判断している。


私がかわいいと思うかどうかだけ。


そこに影響しているのはおそらく、母が昔私に与えた外国の絵本の山と、おしゃれのことしか考えていなかった軽薄な女子中学生〜大学生までの自分が読み倒したファッション雑誌だ。


それは、勉強ではなかった。

ただ好きなだけだった。


メンタル的にも、技術的にもサポートしてもらえる体制が、最初から、たまたまあったという幸運があっただけ。


そして、たまたまお仕事をくれる人たちがいただけ。

デザインを好きだと言ってくれる人たちがいただけ。


私の力は何一つない。


やり始めたのは、社長がケチだったからなだけ。


やりたいから始めたわけじゃない。

誰かやってくれたらそれが一番よかった。

当時、私は、眠かったのだから。

デザインのための時間は、業務時間内にはほとんどなかったから、私は徹夜することになったからだ。

作業自体は面白かったけれど。

とにかく眠たかった。

私は、ただ、売り上げの数字が欲しかった。



そして今、こんこんと相方さんに諭された。

母は数年前には怒っていた。

その時仕事をくれたクライアントさんは、次はお母さんと相談してから値段を決めてくださいねと笑った。


相方さんは、デザインは高いんやでと言った。



さて、遊びに値段をつけるとするなら、それはいかほどか。


わかんね〜。笑

誰か決めて。


しかし、私はセッションで他人のこの作業を手伝う時、必ず、言う。


「自分で決めて。これは自分が評価する必要がある。」


誰か決めて。笑