殺したい人がいます | クリーンランゲージ(5)

誰かを助けたいという思いすら必要ない。

導かなくていい。

誘導しないでも辿り着ける。

癒してあげようとしなくていい。


だって、必ず、自分でなんとかできるからね。


そういうことを教えてもらった私の究極のクリーンランゲージ体験をシェアします。


もう何年も前になります。

ある時、セッションで、私の前に現れた人が言いました。


「殺したい人がいます」


私は一瞬、この仕事を受けるかどうか、迷いました。

私は、反社会的な願望には、手は貸せません。

自分の中にある倫理に反することは手伝えません。

なぜ、私を選んだんだろう、他へ行って欲しかったと正直思いました。


助けたいとは思いませんでした。


私は、その人の話に全く共感できないまま、シンボリック・モデリングを使ってセッションすることにしました。

他のチョイスはありませんでした。

共感できない自信があったから。


ただ、まあ、とりあえず、話を聞いてみようかという感じで。


次の週も、その次の週も、またその次の週も、その人はやってきました。


ちなみに、話のカテゴリーとしては、殺人は、レメディ(問題回避策)だと判断しました。

減らす望み。

この世から、人がひとり減る。


そして、同時に、それが叶うと問題が生まれる。

その望み自体が問題のケースです。

これは割とあります。

シンボリック・モデリングでは、本人が気づくまで、こちらからは、何も気づかせようとはしません。


話しているのは今でも、その中には、未来が含まれます。

その未来が現実になるその時、自分はそこにいません。

だから、気づかせない。

本人が気づくまで。


シンボリック・モデリングは、最初の質問が、未来を想像させることから始まります。

起きればいいこと、は、未来にあります。


私は、ただひたらすら、決まった手順通りに、その人の本当の望みを引っ張りだす質問を繰り返しました。

マニアな方向け説明なら、PROです。


その人が疲れ切ってしまわないように、その中に時折現れる、小さなリソースを少し発展させつつ、ひたすらPRO


私は、全く共感できないままでした。

二つ、三つの同じ質問を繰り返すだけの人のところへ、それでも、その人は通い続けました。


あんなに、「あなたは何が起きればいいの?」だけを、ひたすら繰り返したセッションは、後にも先にも、今のところ記憶にありません。


先行きは見通せず、私は、本気で後悔していました。

なぜ、受けてしまったのだろう?この仕事。でも、今、放り出すわけにもいかない。


それでもまあ、リソースのランドスケープは面白かったので、なんとかなりました。

メタファー、素晴らしい。大好き。



数週間が過ぎた後、「その人がいなくなると何が起きるの?」という私の問いかけに、「楽になる」という言葉が返ってきました。


数週間かけて、初めて登場したアウトカムでした。


そして、それから、また数週間かけて、その人は、深い傷について、取り組みました。


そして、10週め。

その人は言いました。

すごく重大なことを言うみたいに。

リソースが増えたランドスケープの中で。


「幸せになりたいんです」


そして、ぼろぼろ泣いていました。


そしてその後、もう、その人の口から、「殺したい」は出なくなりました。

それは、本当の望みではなかったからです。




私は、その人のセッションを通じて、ああ、本当に、自分はただ問いかければいいだけなんだと、体で知ることができました。


他所へ行ってくれくらいのことで、まったく、私は共感していませんでした。

テクニックですら、できなかった。


助けたいとも思わなかった。

それでも、クリーンな質問と、シンボリック・モデリングは機能しました。


私がしたことは、ただ、メタファー・ランドスケープを、一緒に眺めただけ。



そして、私は思いました。


ほんまや!人は必ず、自分でなんとかできる。自分で自分を救える。



その頃、私の技術は、今よりうんと未熟でした。

だからこそ、私は、信じることになりました。


クリーンな質問の威力を。



少ない方がもっと(効果が)多い。


LESS IS MORE.




クリーンランゲージを使うには、私の気持ちすらいらないのだと、私は、何か大きなことを学んだ気持ちになりました。



そして、私は、それから、クリーンランゲージの世界で出会う人たちが、みな、人間くさい理由がわかったような気がしました。

あんまり綺麗事な人がいない。

人間くさいです。


そこに必要なのは技術だけだからだ、と、わかったのです。


自分は自分のままでいい。


ただ、話を聞けばいい。

クリーンな質問と一緒に。


ひたすら技術を磨け。腕を磨け。

そう思いました。


自分の人間性は、クライアントに関係ない。

それは、自分の問題。

自分の感情は、クライアントには関係ない。

それは自分の問題。


私は、何か大きな宝ものを、まじ勘弁してくれというストレスしかなかった数ヶ月がくれたような気がしました。


私には守秘義務があるので、誰にも相談できませんでした。

英語でなら相談できたかもですが、英語力、文章力が足りず、セッションを翻訳できませんでした。


結果、私は、自分の目で、クリーンランゲージの効果を確認できたのです。



念のために書いておきますが。


「人を殺したい」という相談は、私は二度と受けません。

あれが最初で最後。