体験しなかった記憶



猫が思い出させた笑い話。

このおちびさんな猫は、寝ている時以外は私に付いて歩く。
寝て起きて、私の姿が見えなくても鳴く。
トイレにまでついてくる。
とんでもなく甘えたな猫で、ひとりでよく喋る。

たまに、本当に猫なのか?と思うような行動をする。

しかし、この猫は、抱っこが大嫌いで、抱かれると降ろして!と鳴く。


私には、母に抱かれた思い出がない。
妹が母に抱かれていた記憶はたくさんある。

いつだったかある時、それを叔母だったか母だったか、2人揃っていた時に告げたら、2人は、それは当然だと笑った。

あなたは赤ちゃん時代から抱っこが大嫌いで、歩けるようになってからは、あなたは、怖いか疲れた時以外は、自分で歩く!と言って聞かなかったから、誰もあなたを抱っこしたくても抱っこできなかった、と。


抱っこが嫌いだったので、抱っこされた思い出はない。
疲れた時は寝ていただろうから記憶にはない。
怖い時は怖いことを覚えているから抱かれていたかどうかは意識にない。


見たものと体験しなかったことを覚えてはいても、なぜ体験しなかったかその理由は、記憶としては残らないようだ。


さて。
この猫は、私が他の猫を抱っこして撫でているとにらむ。
私が他の猫を可愛がるのは気にくわないようだ。
しかし、その猫を抱っこすると、にゃああ!と鳴いて飛び降りる。

この猫が、私に大人しく抱かれているのは、病院に行った時と寝ている時だけだ。