DAY80: そして それは どんな「あなた」なのでしょう?
それは、どんな「あなた」なのでしょう?
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人に自分が持つ知識を分けようとしたとき、学習や理解が深まるのは、よく言われることです。
人に分けてみて、初めて、わかることがあるのも、よく言われることです。
自己啓発の話では、これは「アウトプット」の効果として語られます。
思想宗教のエリアでは、「自ら分ければその何倍ものものを、自分が受け取ることになる」という話として、語られます。
そのとき、作業としてすることは、「自分の考えや理解を言葉にして、他者に伝えてみる」、もしくは、「自分が誰かから聞いた知識を、他の誰かに伝える」です。
すると、まず起きることは、伝えるために自分の頭の中の考えを整理する必要が登場します。
ここで、内省が発生します。
次に、言葉を選ぶ必要が登場します。
言葉はいつも同じではありません。
相手が誰なのかによって、言葉は変わります。
幼稚園の子供に、クリーンランゲージを伝えるときと、大人にクリーンランゲージの話をするときとでは、同じ言い方はしないように。
言葉にしてみると、相手からは、反応があります。
この現れる反応のことを、シンボリック・モデリングでは、フィードバックと呼んでいます。
次に起きることは、反応を受けて、自分が考えます。
そして、考えることで、自分の知識や理解は増します。
時には、自分の理解が変わることもあるかもしれません。
時には、新しい発想が生まれることもあるかもしれません。
結果として、自分が変容するかもしれません。
誰かに、頭の中にある何かを分けることがもたらす効果は、ものすごいものがあります。
これは、人間が昔々から、し続けてきたやり方です。
相談、議論、会議、学級会、打ち合わせ、ミーティング、根回し、たくさんの名前があります。
私の理解では、シンボリック・モデリングでクライアントがしていることは、最初から最後まで、これです。
ただし、クライアントが自分について伝える相手は、他人ではありません。
見る反応も、他人の反応ではありません。
クライアントは自分自身に伝え、自分自身の反応を見、自分自身の反応から、自分自身が学びます。
何を?
自分の望みを。
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ファシリテーターがしているのは、言葉を変えるなら、「そこをアウトプットしてみませんか?」と、どこについて言語化するかを誘う作業です。
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ファシリテーターがしているのは、自己と自己が対話するのをサポートする作業です。
だから、介入はしない。
原則的には。
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本日、ここまで書いたことは、私が「ウウンフ」について考えていた中で、生まれたことです。
日本語の質問に、最初の質問に、それが持つものと同じ効果を生み出したい、という私の願いをもとに。
そして「ウ」がないという問題から発想するのではなく、効果を生み出すためには?と発想を変えたとき。
そして、やがて、私の頭に浮かんだのは、「あなた」というメタファーでした。
この「あなた」に、言葉が届く必要があるのです。
質問、ですから。
最初の最初、最初の最初に。
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この「あなた」はどんな「あなた」なのだろう?
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最初の最初以外は、他の要素が、「ウウンフ」と同じ働きをします。
幸い、日本語話者のクライアントは、その要素を非常によく使います。
早いうちから、それを使う練習をすればいいだけだということには、私は気づいています。
ファシリテーター側は訓練が必要ですが。
ウウンフの代わりの仕事をしてくれるものは、ジェスチャー、です。
私が観察した日本語話者のファシリテーターの特徴の一つは、あまりに、「ファシリテーターが」言葉を一語一句、聞き漏らさないように夢中になることです。
しかし、「クライアントは」、ファシリテーターが理解するために、言葉を語るのではありません。
「クライアントは」自分自身に聞かせるために、言葉を話します。
「ファシリテーターが」言葉を正しく聞き取るよりも、「クライアントが」自分が言った言葉を聞くことが、重要です。
「ファシリテーターは」クライアントをしっかり「見る」必要があるのです。
これは、私が、トレーニング過程で、注意され続けたことでもあります。
「あなた、ノートを見ている時間が長い。その間にクライアントが何かしたら、どうするつもり?」
「あなたの次の課題は、できるだけ、ノートを取らないようにすること。ノートは、あなたの記憶をサポートするにすぎません。」
「メタファー・ランドスケープは、あなたのノートの中にはないわよ。」
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ジェスチャーが使えない。
クライアントの息遣いも、まだ、わからない。
だからこそ、最初の質問が、どこに届くかは、大きい。
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質問のお届け先は、「あなた」です。
注意を向けているのは、「あなた」。
さて、この「あなた」は、どんな「あなた」なのでしょう?
それが、私の頭に浮かんだ反応。