泣きっ面に毛虫:アンガーマネージメント

 泣きっ面に蜂ならぬ、泣きっ面に毛虫。


管理人さんがバラを剪定してくれたはいいが、私が三年かけて育てたツルがズタズタになり、私は、言葉通り、泣いた。


ひどい。


私は、あまりのショックに、管理会社に、「言っても元には戻らないので仕方ないんですけど、器物損壊レベル」と泣きながら苦情の電話をいれた。


怒りくるいそうになったので、深呼吸をした。

知識はたまには役に立つ。


怒りくるいそうになったら、深呼吸。

これ大事。

傷ついた瞬間、自らに残るダメージを最小限にするために、自分を守る必要がある。


怒り狂って、一番傷つくのは、自分だ。



私は、泣きながら、ぶつぶつ、お祈りを唱えた。

「我らに罪をおかすものを我らが許すごとく、我らの罪をも許したまえ。」


10回は言ったので、相当、許せない!となっていたのだと思う。


来年の春、バラの花は咲かない。

多分。

ツルが伸びた先に、花は咲くから。


それから、私は、まだ泣きながら、ズタズタになったバラをなんとかサマになるように、整えはじめた。


そうしたら、手に激痛が走った。

そして、左手の中指と、右腕が腫れた。


毛虫だ。


泣きっ面に毛虫。

なんなの、もう。


ふと見ると、そばでは猫が、切られたバラのツルと格闘し、じゃれて遊んでいた。


私は、シュールな状況に、ついうっかり、あははと笑ってしまった。


それから、水道で手を洗い、虫さされの薬をぬり、バラをまた整えた。


それから、家を出て、散歩をした。

これまた知識が私を助けた。

何か腹が立ったら、すかさず、別のことをして、今、起きたことは重要なことではないと、自分をだますのだ。

考える時間が長くなればなるほど、脳は、それが重要事項だと判断して、自分が傷つく時間が延びる。


傷ついたら、いかに早く、リカバリーに入れるかが勝負なのだ。

そして、そうできるように、自分をコントロールできるかどうか。


いかに、感情の奴隷にならずにいられるか。



ともかく、帰ってくる頃には、気分はだいぶましになっていた。


泣きっ面に毛虫。



そして、起きてしまったこと、戻らんものには執着しても仕方がない、と、私は思った。

考えても、元には戻らない。


ならば、今から何が起きればいいか、だ。



そして、私は落ちついて、「毛虫 刺された」と検索しはじめたのだった。

傷ついた心より、ぱんぱんに腫れた左手の中指の方が、なんとかできそうだったからだ。


そして、それから、「あ!ちゃんと対応できた!」と自分に満足した。


そしてそれから、1週間もすれば、私は今日のことを忘れてしまうだろうと思った。


どうしようもないことは、忘れてしまう努力をするのが、私的には幸せのコツだ。