物質世界の人間関係

続き。

人間もまた物質だ。

自分を変えたい、自分の周囲に広がる人間関係を変えたい時。

それは、椅子の色を変えたい時と同じ部分もある。

人間関係に悩む多くの人が、まず真っ先に手をつけることが多いのは意識だ。
自分の感じ方、自分の考え方、自分の中にある過去の傷の癒し。

それらは大事なことだ。

だが、人間は意識だけの存在ではない。
肉体という物質を持つ存在で、人間の世界を構成する要素の多くは、外側からも見える部分、物質的な表面に影響を受けている。

だれかと仲良くしたい時、仲良くしたいなと思うだけでは仲良くできない。

仲良くしたいということが、表面上にわかるようにしなければ、仲良くなれない。

人に愛されたいと思う時、愛されたいと思うだけでは愛されない。
愛されるように意識するだけでも愛されない。
愛されるように振舞わなければ愛されない。


特に、付き合いが始まる最初、その人の考え方はわからない。
表面上に表現されているところから、相手を推測するしかない。

エスパーでない限り。

人間は物質だ。
椅子の色を見るように、人は人を見る。

人間関係の調和を作るのは、並ぶ椅子の色の調和とある意味では同じだ。


表情、振る舞い方、声の発声、姿勢、そういった物理的な部分に、人間関係は作用される。

その人がどんな考え方、意識、感じ方をするかは、そこにはもちろん影響するけれど、極端なことを言えば、意識や感じ方と真逆のことも表面は作ることができる。

姿勢をよくするのに精神性は関係しない。
表情を作るのに精神性は関係しない。

そして、どのような精神性でそれが行われているかより、表情や姿勢そのものに、見た人の心は影響を受ける。

映画やドラマの中で役を演じる俳優は、嘘をついている。
しかし、その嘘を見て、すごい時には見た人の人生すら変わってしまうこともある。

演じた俳優の人間性は、そこに関係していない。
意識も関係していない。



意識の変容には時間がかかる。
表面的なことを変化させるのは、それより簡単なことが多い。

変わらない自分がそこにいる時、物質側から入る方が早いこともある。


変わらない自分を抱えている人がもしもいるなら、表情や姿勢、服装、話し方、呼吸、そちらから手をつけることで、意識や世界が変わり始めることもあるかもしれない。


意識と肉体は切り離された存在ではない。
どちらから手をつけても相互作用する。