出会いの話
私の思い出を。
それは、数年前のカリフォルニアの夜のはなし。
私は、数日間、連続したシンボリック・モデリングのワークショップに参加していました。ちょうど、今くらいの時期です。
ワークショップ後に、夕ご飯をみんなで食べに行くことになりました。
レストランは長テーブルで、20人くらいがずらずら並んで座りました。
私は片側の端っこの方に座り、アメリカ人2人、日本人2人とわちゃわちゃ話していました。
「ゆかりがもしも英語をすらすら話せたら、彼女はコメディエンヌだ」と、友達になったミキちゃんがアメリカ人に説明し、「彼女が住んでいるところには、笑いの血が流れている(大阪のこと)」とユウジさんという男の人も説明しました。
マイクとケイティというアメリカ人2人はとても陽気で、マイクはそのあと、私がマイクの側を通るたびに、「ユカーリ、あそこにクッキーを置いてあるからね」と、私にクッキーを勧めてくれました。
(子供に見えていたのかもしれない)
私は、みんなに、「このジェスチャーはどういう意味なの?」とピースを2つ、肩の上あたりまであげて指を二回折るジェスチャーをしてみせました。
映画オースティン・パワーズで見たことがあるそのジェスチャーは、会話で時々登場しましたが、私には、意味がわからなかったからです。
その時、たまたまそこに、ジェームズがやってきて、私の隣に座りました。
マイクが「言葉の専門家に聞け」と、笑っていい、私は、「これはどういう意味ですか?」とジェームズに尋ねました。
ジェームズは、「これは、信頼できないけどね、あてにはならないけどね、とかそういう意味だよ」と言いました。
それで、私は、「メタファーは素晴らしい」と言いながら、そのジェスチャーをしてみました。
すると、みなの反応がイマイチだったので、「じゃあ、これなら?」と。
「(ジェスチャーしながら)ジェームズ・ローリーによれば、メタファーは素晴らしい。これはあってる?」
するとですね、場が凍りました。
私以外の全員が、し〜んとしました。
あれ?すべった?と、私が思った瞬間、ジェームズが椅子の背もたれにどかっと寄りかかり、「誰がそんなことを言うんだ」と言ったあと、大笑いし始め、すると、全員がゲラゲラ笑いました。
そのあと、テキストに掲載されていた「空襲警報」というメタファーについてジェームズと私は、意味を確認して、そこで、ジェームズが真似した音が上手だったので、私は「上手だけど、聞いたことがあるんですか?」と素直に問いかけたところ、ジェームズが「君は、私をいくつだと思ってるんだ」と、呆れて笑いました。
翌日、ランチを取りに並んでいると、ペニーがやってきて言いました。
「ユカリ、昨日はありがとう。ジェームズはいつでも、冗談は大歓迎なんだけど、偉くなってしまったから、誰もああいうことは言わないのよ。楽しかったみたいよ。ありがとう」
そのあと、私は、ミキちゃんに、「ペニーが、昨日はありがとう、ジェームズも喜んでいたって」と言いました。
ミキちゃんは、少し考え、「ペニーは英語でなんて言ったの?」と聞きました。
私は、「あのねえ、ジェームズ ワズ ショックド。(James was shocked.)」
ターキーサンドの乗ったトレーを持ったミキちゃんは呆れたように笑い、「ゆかりちゃん、英語のshockedは日本語と同じ意味よ」と言いました。
私は、「え〜!」と言い、大笑いになりました。
まあいいや、ペニー、ありがとうって言ってたしということで。
そのあと、日本に帰ってきて、最初にしたセッションで、それまで起きなかったことがクライアントに起きました。
それで、感動した私は、SNSにそのことを書きました。
「私が変われば、クライアントが変わる」
すると、ジェームズがコメントをつけたので、私は「正直に言うと、あなたが英語で言ったことは半分しか理解できなかった。あとは、あなたの振る舞いを見ていた」と、書きました。
すると、「もしも、君が理解した半分がいいものなら、それは半分ではない」というような返信がありました。
それが、私とペニー、ジェームズの出会いです。
だいぶ、笑い話。