思い通り、の、意味
比喩的な言葉から生み出されるメタファー・ランドスケープは、「物」の世界です。
その世界の中にある物を、クライアントが体験する、つまり・・・その物を、
見る
聴く
感じる
嗅ぐ
味わう
触る
気づく
考える
動かす
試す
確かめる
明らかにする
それが何かを見極める
それをどうするか選択する
つまり、メタファー・ランドスケープの中を生きてみることで、クライアントが「自分の望みや願い、希望、求める結果を実現する」のを、質問を問いかけることによって手助けするのが、ファシリテーターの仕事です。
私が観察した感じでは、自分自身が、練習で、練習だと思って適当にファシリテーターに協力的なクライアントをやるセッションしか受けたことがないファシリテーターさんは、これが理解できていないことが、ままあるように見えます。
つまり、優しい人ですね。
(練習は、本気でクライアントをやる方が、お互いのためになるので、クライアントをするときは、本気でクライアントをすることをおすすめします。)
さて、何が理解できてないんちゃうかなと私が感じているかというと、クライアントがメタファーの世界の中をその瞬間、「生きていること」
何もかも、自分の思い通りの世界の中を。
メタファー・ランドスケープは、道具を使わない電気代がかからないバーチャル・リアリティの世界だと考えれば早いかもしれません。
ファシリテーターは、クライアントの望みに沿って、その世界の視点だけを操作するオペレーターみたいなもの。
視点だけを動かして、目に入るものが変わった時、そこで何が起きるかは、クライアント次第。
なぜなら、そこは、何もかも、「クライアントの思い通りの世界」という初期設定がされている世界だからです。
そこに、他人の価値観はいらんのです。
だって、好きなように、思い通りにしていいんだから。
ここで一つ、言葉の説明。
「思い通り」という言葉は、一般的に割とポジティブな意味合いで使われている感じがあります。
しかし、この場合、この思い通りには、ポジティブもネガティブもありません。
クライアントが「思った通り、そのまま」という意味です。何かがうまくいくという意味合いは、ありません。
その人の頭や体、心が望んだままに、というだけのこと。
シンボリック・モデリングは、別に、エクセレント・ステイトや最高の状態や何かを目指していません。
(そういうワークもありますが、そういうワークは、だいたい短い時間でやるように作られていて、最初の質問で、フレームを提供します)
だから、変な話ですが、「あなたは何が起きればいいのでしょう?」から始まるセッションの中では、クライアントは「上手いことやる必要は、一切、ありません」
ファシリテーターは、クライアントに良いことが起きるように、または、クライアントが上手にできるように、手伝う必要はありません。
そこを励ます必要もありません。
上手くいく方法も、考える必要はありません。それらは全て、クライアントがやることです。
クライアント自身のやり方で。
クライアント自身の考え方で。
クライアント自身の人生の中に存在するものを使って。
クライアントは、自由に、失敗して構いません。
失敗や症状は、最高の努力、最善の努力の結果であり、失敗や症状を悪いものだと考える概念は、クリーンランゲージやシンボリック・モデリングにはありません。
また、例え、悪いものだったとしても、それを避ける、しないようにするという発想もありません。
それは、単なるレメディで、シンボリック・モデリングは、そこを発展させる技法ではありません。
最近、私が気づいたのは、「クライアントが失敗しないように」上手くいく方法を考えて、何を質問すれば、上手くいくかを推測して言葉を選んでいるように見えるファシリテーターさんが、割といることでした。
失敗が嫌いなのかな?
シンボリック・モデリングでは、私は、それはやりません。(他のやり方をするときは、やることもありますが。全部のケースで、シンボリック・モデリングが使えるわけでもないので)
私の理解では、アウトカム志向は、「上手くいく方法をファシリテーターが段取りをする」ということではありません。
クライアントが思った通りにやった結果が、ただ、上手くいかなかったというだけのことです。
「自分が思った通りにやると、うまくいかない」、これに自ら気づける機会ってむちゃ貴重だと、私は思います。
考えたことと、その考えを元にした選択の結果を並べて確認できることは、とても貴重だと思います。
物になっているから、冷静に比べて理解しやすいですし。
しかも、うまくいかなければ、すぐやり直せますし。
何度でも、時間を巻き戻せる。
さて。つまり。
ファシリテーターが質問したことで、クライアントに問題が発生する。
それは、ファシリテーターが質問を間違えたから?
いいえ。
ファシリテーターが質問したことに、クライアントが答えられない。
それは、ファシリテーターが質問を間違えたから?
多分、はい。
それが頻繁していたら、質問する場所が違うはずです。
おそらくは、観る場所が違うか、文脈から大きく外れたか。
思い通りには、失敗はつきものです。
試行錯誤を繰り返すのを、ファシリテーターは手伝います。
そして、これは、自身のクライアントとしての体験からもですが、メタファー・ランドスケープの中で、たくさん失敗したことは、現実ではまず失敗しません。
このやり方はあかんと体が知ってるからでしょね。
メタファー・ランドスケープで失敗すればするほど、現実ではうまくいく、というのが、クライアントとしての私の感想です。
クライアントの思い通り。
ファシリテーターは、どこまでそれについていけるかが、シンボリック・モデリングの楽しいところだなと、私自身は思います。
もう想像できないことが頻繁に起きますから、楽しいです。
人の世界の理解は、多様なんてもんじゃありません。
あなたの思い通りと、クライアントの思い通りは、違います。
あなたにとっての思い通りが、「失敗しないこと」「安心なこと」「安全なこと」「上手くいくこと」「優れていること」「成功すること」などのファシリテーターさんは、自分のそれを無意識にクライアントに押し付けてしまわないように、少し、注意が必要かなと思います。
クライアントの思い通りは、違うかもしれないので。
例えば、「上手くいくより冒険よ!危険は胸がワクワクするわ!」とかですね。
そのランドスケープには、いくら探しても、きっと、「失敗しないこと」「安心なこと」「安全なこと」「上手くいくこと」「優れていること」「成功すること」、そのための方法はないかもです。
だって、クライアントが望んでいないから。
と、いうこともあります。
〈今日のまとめ〉
ファシリテーターの仕事の一つは、体験させること。
そのための視点を、質問でクライアントの目線を誘うことで、提供すること。
この場合の思い通り、は、ポジティブな意味ではありません。
〈私用のフィードバック〉
オオタニくんが、まだわからないと言いそうだから、じゃあ、具体的にはどうやるのかをまとめること。