ザクっと全体の流れ|クリーンランゲージ&シンボリック・モデリング

本日は、クリーンランゲージ&シンボリック・モデリングのセッション全体について、少しご説明を。
これもそのうち、どこか別の場所に書くと思うけれど、今日のところはこちらに。

私が、他人から、クリーンランゲージ&シンボリック・モデリングについて質問される内容で、ダントツに多いのが、「セッション全体の流れ」だからです。
初心者対象の勉強会をしても、まず、尋ねられるのは、こちらです。

それで、今、準備していることの中に、こちらを突っ込んで欲しいとお願いしたけれど、それは初心者には理解は無理だということで却下されたので、諦めて自分で説明することにします。

なぜに、質問については、言語の違いを理解してもらえるまで食い下がったのに、今回は諦めたかというと、私がそれをお願いした人にとって、これを理解することにそうはメリットはないと思ったのと、学習に対しての理解の違いだけで、クリーンランゲージの本質とは関係ないからです。

そして、これは、とても面白い違いだな、と思っています。
おそらくは、日本人の皆さんは、詳細を知らなくても、全体は理解できると思います。
むしろ、全体像がないことで、不安を覚える人がいることすらあります。
けれど、西洋の人にとっては、それは、初心者では理解できないという判断になります。
認知や理解の違いは、学習体系一つとっても違いがあって、とても興味深いです。

日本人の日常の物事の把握の仕方からいくと、おそらくは、技法の大枠と全体の流れを把握したい人が多いはずと推測します。
ところが、クリーンランゲージ業界は、英語生まれの技法なので、一つ一つ、小さなパーツを重ねていくことで学習する体系が作られています。


この日英の物事の把握の仕方の違いは、住所がわかりやすいです。


英語の住所は、番地から話が始まります。

番地→通りの名前→町→市/郡→郵便番号→国。

小さな方から大きな方へ。


日本語は、日本、から話が始まります。

国→郵便番号→都道府県→市/郡→町→番地

大きな方から小さな方へ。


けれど、行動は同じで、どちらも、なんらか動いて、目的地へとたどり着きます。
理解していく順番は逆でも、行動は同じ。


同じ行動、違う理解方法。



というわけで、クリーンランゲージ&シンボリック・モデリングの全体の流れについて、ザクっと。

ご注意いただきたいのは、これは、シンボリック・モデリングの手順であって、クリーンランゲージの質問を使う他の技法は、また異なる流れを持っているということです。

使うのは同じ質問、でも、それぞれ、異なる流れを持っています。

私が、今から説明するのは、シンボリック・モデリングの順番。


実際は、この通りには進まないことも多いし、または、用途によって、部分的に引っこ抜いて使うことも多いけれど。



  1. 「あなたは、何が起きればいいのでしょう?」という質問からセッションは始まります。

    これは、何をしているかというと、色々しているけれど、主には、「その人自身」が想像できる未来を尋ねています。起きて欲しい未来。
    目線を後ろ(過去)ではなく、前(未来)に向けるため。

    そして、変な質問なのは、「いつもと違う思考回路」でものを考えてもらう為です。
    アインシュタインは言いました。
    「問題が生まれた時と同じ考え方では、問題は解決しない」

    そして、この1が、シンボリック・モデリングは何のための技法なのか、一言では説明しにくい理由です。
    「その人が起きればいいことをファシリテーションする」のがシンボリック・モデリングなわけです。起きればいいことは、バラバラですね。

    問題を解決したいというなら、問題解決のためのファシリテーションになるでしょうし、何かを生み出したいというならば、それは、創造のためのファシリテーションになるでしょうし、自分の強みを追求したいというならば、それは強み(ストレングス)を強化するためのファシリテーションになるでしょうし。
    何かシステムを開発したいというならば、システム開発のためのファシリテーションにもなるでしょうし。

    個人の世界観や価値観、創造性が関わることになら、色々と使えると思います。
    実際に使われているのは、コーチングやカウンセリングの分野だけではなく、スポーツ、整体、教育、マーケティング、文筆、それから、教会で使われている記事も読みました。
    病院。介護。イギリスでは、いろんな現場で、使われているようです。



  2. そして、1の後の段階はPROというモデル(雛形/仕組み)で、そこでは何をするのかというと、「アウトカム」をはっきりとさせます。
    「どこを目指して話を進めるのか」というその最初の目的地を定めます。
    この目的地、アウトカムは、「その人が価値を認めるか好きなこと+まだ、その人が持っていないもの」です。


  3. 2ではっきりさせたアウトカムを発展させ、メタファー・ランドスケープを作ります。
    メタファー・ランドスケープは、その人の内側に広がる心の世界です。

    クリーンランゲージでは、「他者の世界観には介入しない」のですが、それは、メタファー・ランドスケープで話をするからです。
    「その人の内側に広がる心の世界」に介入しない、と言っています。
    具体的には、「そのメタファーはおかしい」と自分の感想を述べてみたり、「そのりんごはそこに置いておくより、あっちにおいておいた方がいいんじゃない?」と勝手に、良かれと思って、その人の心の中のりんご(メタファー)の場所を変えたりしないということです。

    アウトカムがはっきりしたら、そこからは、メタファーで世界を作り上げるべく、話をメタファーで進めます。
    「その人が望む世界」をメタファーの状態で、3D化していきます。
    この手順を、セルフ・モデリングといいます。

    この辺りから、ノリとしてはほとんど、空想遊びで遊んでいるのと変わらない作業になります。
    どんな人の中にもある創造性や豊かな経験、その人が持っている知識、いいところ、環境、そういうもので使えるものをその人自身が選び、その世界を作り上げていきます。

    作業としてはシンプルです。
    ファシリテーターは質問するだけ。
    クライアントさんがする作業は、質問に答えるだけ。
    質問に答えながらする、この空想遊びは、けれど、体感を伴います。
    そこに、その空想は、現実として存在します。

    このあたりから、クライアントさんの状態は、サイコアクティブという心理的に活性化した状態になっています。
    ファシリテーターの仕事の一つは、このサイコアクティブな状態を安全にキープすることです。



  4. メタファー・ランドスケープが豊かに成熟したら、時間を前や後ろに動かしてみます。
    これは、何をしているかというと、そのメタファー・ランドスケープは、「その人の望む世界」ですが、その世界がどういうきっかけで現れるのか、また、その「望む世界」が現れたあと、何が起きるのか、その結果をバーチャルにシュミレーションしてみるためです。



大雑把に、とてもざっくり説明すると、以上の流れを繰り返しています。

この中で、トレーニングで一番最初に練習することが多いのは、2のメタファー・ランドスケープを作る練習です。
いきなりアウトカムを扱うのは、ちょっと難しいので、まずは、「リソースワーク」というその人の強みや得意なこと、好きなこと、長所などを題材に使って、メタファー・ランドスケープを作る練習をします。

それができないと、シンボリック・モデリングのセッションはできないので、ここは、しっかり練習することが必要です。

この段階で、耳を「その人の望み」や「その人のリソース」に集中させて言葉を聞き取る練習もします。
普段とは異なる話の聞き方を覚えます。
この話の聞き方は、これを覚えるだけでも、かなり役に立ちます。

また、「自分の価値観」や「自分独自の考え方」が存在することに気づくことを体験として学びます。これは、本当に細部に渡ります。



また、クリーンランゲージの話の聞き方は、「情報中心」の話の聞き方です。
一般によく使われるファシリテーション方法では、「人中心」の共感ベースの話の聞き方が多いです。


それから、「理解し合うこと」には重きを置いていません。
あくまでも、クライアントが、その人自身の世界を理解し、発展させ、創造していくことが目的であり、ファシリテーターが、その世界を理解できるかどうかには、配慮されていません。
徹底的に、クライアントのためのセッションです。

それでも、面白いのは、私が何とかかんとかクリーンランゲージの勉強を英語でやって来れたのは、セッションを通じて、「人と分かり合えた」ような感覚がそこにいつもあったからです。以前にも、一度書いたことがありますが、言葉に制限が入るぶん、もっと深いところでのコミュニケーションが発生しているような感覚が、私にはあります。


また、「Being comfortable with not knowing」というクリーンランゲージに関しての言い回しがありまして、これは、「(自分が)知らない/理解できない/わからないことと一緒にご機嫌(落ち着いて)いる」というような解釈を私はしています。

クライアントが何のことを話しているかさっぱりわからないわということが、メタファーの世界では、頻発します。
想像すらつかないことが、常識の通用しないことが、頻繁に起こります。

(自分にとっては)それは当たり前でしょう、というようなことが、ちっとも当たり前でない事態にも遭遇します。

メタファーの世界はなんでもありです。
予測がつきません。

「未知なる未来」に、ファシリテーター側も向き合うことになります。
(私は、それが面白いのですが)

それでも、深いところで対話をしたような気分にはなります。
話の中身はさっぱり理解できなくても。(初期の私の英語のセッションは、内容をほとんど全く把握しないまましていたので、本当にほとんど何も内容は理解できていませんでした)


とまあ、こんな感じでしょうか。

1〜4の流れの中に、色々と使うテクニックがあり、それらは、そのテクニック単体でも引っこ抜いて使えます。

また、この1〜4の全ての流れの中で共通していること。
原則として、クリーンな質問以外は、全て、クライアントが口にした言葉をそのまま使うこと。
(文脈として合えば、クリーンな質問以外の質問を使用することもあります)


この1〜4を行うにあたり、必要な姿勢。
思い込まない、決めつけない、押し付けない。



ザクっとこんな感じでした。