良妻賢母より質実剛健

私の実家の教育方針だったもの。
それがタイトル。

母がしょっちゅう言っていた。

良妻賢母に女性の幸せはない、妻も母も役割に過ぎない。
良妻は夫の幸せ、賢母は子供の幸せ。
自分がそこにはない。
自分の幸せを考えなさい。

それが、母の主張だった。
自分らしく、というフレーズが世に登場するのは、それから随分後の話だ。

子供の頃から質実剛健と刷り込まれた2人の娘は、たくましく育った。
2人が持つのは、それぞれ違う種類のたくましさだ。

姉が持つのは、「あなたは世界のどこでも、人間が自分以外にひとり以上いれば、きっと生きていけるだろう」と言われる種類のたくましさ。

妹が持つのは、現実社会の荒波の中を、強く主張はせずに、しなやかにしたたかに生き抜くたくましさ。

果たして、それが成し遂げられた後、母が次の世代、つまり私の姪に話して聞かせていることは、もう少しシンプルだ。


あなたは、あなたが今、好きなことを頑張ってやればいいのよ。
ばあばはね、あなたが大好きなの。
あなたが幸せだと、ばあばは幸せなのよ。
ばあばは、あなたが大事なのよ。


つまり、彼女は、きっと私たちにも、そう言いたかったのだろう。

良妻賢母より質実剛健は、きっとそういう意味だったのだろう。