招待する | Translation of the word, INVITE in Clean Language

最近、私がはじめてクリーンランゲージのトレーニングに出た日、一緒にいたあるクリーン仲間が発したひとことが、私の深いところに響きました。

その人と私は、2人で東京から大阪に帰る新幹線に何度も乗りました。


響いた言葉はこれ。


「難しい専門用語じゃなくて、日本語」



このひとことが、私が長い間翻訳を考え続けてきたある英単語の翻訳を決めました。


その単語は、INVITEという動詞です。


クリーンランゲージの質問は、全て、非指示的な質問です。

質問者は、クライアント(回答者)が注意を向ける場所(言葉)を、質問の中で特定はしますが、それは指示ではありません。


あくまでも、質問者は、クライアントをINVITEしているだけなのです。


クリーンランゲージの質問は、全て、質問者からクライアントへのINVITATION、つまり、招待状なのです。


質問者が、認識としてそれが理解できていない時、クリーンランゲージは使うのが難しくなります。


なぜかというと、指示ならば、指示に対する答えが返ってきます。

けれど、招待状の扱いは、招待状を受け取った人の自由だからです。


実際、現実でも、喜んでそこに行く招待に応じたい招待状もあれば、そこには行きたくないね、参加したくないねと思う招待状もありますね。


質問者は、クライアントの立場に立って、そこに行ってみるといいんじゃないかと推測できる場所(言葉)を選んで、クライアントに招待状を送ります。



この作業を、クライアントをINVITEすると言います。

INVITEはINVITATION(招待状)の動詞形です。


INVITEを、誘うと訳すか、招くと訳すかで、私は長らく考え続けてきました。

ファシリテーターをサポートするメタファーとして、質問が非指示的であることの理解をよりサポートできるのはどちらだろうと。


ちなみに、INVITEの通常の訳には、促すという訳語もあります。

しかし、促すには誘導的な意味あいが少しばかり入ります。

そのため、クリーンランゲージの文脈では、促すは適さないと判断しています。


私の中で候補に残ったのは、招く、誘う、の一語でした。

けれど、私は一語に決めきれないまま、数年の時が流れました。



冒頭の言葉を聞いた後、私の中で何かが動きました。


なぜ、これを候補から外したのだろう?

メタファーとしては、一番わかりやすかったのに。


私の中で、疑問と、それから数年の問いに決着がついたことを知らせる何かが生まれました。


そのまま、ただ、招待すると翻訳すればよかったのだと、私は気づきました。


招待状を送り、クライアントを招待する。


それでよかったのだと。



さて。


ここで、ひとつ、ちょっとした量の作業が発生したことに私は気づきました。


販売予定のテキストの中にあるINVITEの訳語を全て書き換えること。

招待状についての文章を入れること。



やるしかありません。


気づいたことが現実を変えるのは、その気づきを行動に繋げるから。


テキストを、自信を持って世に送り出したいならば、私はめんどくさい作業をやるしかありません。



クリーンランゲージの質問も、質問そのものは指示的に使用できます。

クリーンランゲージの質問を、非指示的な質問にするのは、ファシリテーターの意識ひとつだからです。


それについて説明する言葉ひとつで、ファシリテーターの意識は変わります。

翻訳者の価値観や考え方、伝えたいものに、翻訳は左右されます。



ファシリテーターが、のびのびと好奇心いっぱいに、招待状を送り続ける方法を身につけることができる表現、それを見つけ出すこと。


私が数年、取り組み続けてきたことが、一歩前に進むヒントを、仲間がくれました。



そして、私の頭の中に、2人でくたくたになって、混雑している新幹線の中でああだこうだ話したり、爆睡した時間が浮かびました。


2人でした練習セッションで、あまりに2人が互いにメタファーで笑いを取ろうとする合戦を繰り広げ、互いのメタファーを聞いて笑い転げていたために、笑いすぎだと先生から注意された日も思いだしました。

注意しながらも、同じく関西出身の先生は笑っていいました。

「2人でやる時はいいけれど、他の人と組む時は気をつけなさいよ」


ただ楽しかった。



そんなことも、思い出しました。