ある友人の話

年に一度、お盆の時期に会う友人2人。
高校3年の同級生だ。
高校に通っていた時は、3人共、違うグループにいた。
そのクラスは全体が割と仲が良かった印象がある。

今日はその内、1人の話。

彼女は、友人の中で、一番最初に23才で結婚した。
すぐに赤ちゃんが生まれ、すくすく育った赤ちゃんは、やがて、私達が通ったのと同じ学校に通い始めた。

経済的にも恵まれた暮らしをしていた彼女の人生は、数年前に大きな転機を迎えた。

ある日、彼女が家に帰ると、彼女の夫が倒れていた。
救急車で運ばれた彼は、一命を取り留めたが、以降、まだ、目を覚ましていない。

彼は、植物状態になった。
娘は、大学生になったばかりだった。

様々なことがあった。
彼女が乗り越えなければいけなかったものは、たくさんあった。

やがて、彼女は、フルタイムで派遣社員として働きだした。
一年後、正社員として雇用された。

彼女の娘は、就職が決まった。
彼女の夫は、まだ、眠り続けている。


今年、「だんなさんは元気?」と私たちは尋ねた。
元気に寝てるよ、と、彼女は笑って答えた。


笑ってそう言い合えるようになるまでに、彼女が乗り越えたものは、精神的にも現実的にも大きなことだったが、私は、その間、一度も心配しなかった。

彼女は大丈夫だと信じていたからだ。


彼女は、夫が目覚める日を待っている。
いつか彼女の夫が目覚める日を、私も待っている。

彼女の夫は眠り続けているが、彼女は幸せそうだ。
私が知る限り、今が一番幸せそうだ。


私は彼女を、誇りに思う。

また来年。